となりの色気がうっとうしい
「……西木さんっ!!」
え。
学校を出て数百メートル。
名前を呼ばれて振り向くと、そこには少し息が上がった片耳ピアス男が立っていた。
「……天海くん」
「月雨ちゃん、歩くのまじ早いね。競歩?」
その一言に、ムッとする。
なんで追いかけてきたのよ。
ここまで来ると、人をムカつかせる達人だと思う。
さっきは、お礼を言わなきゃって気持ちでいっぱいだったのに。そんな気持ちが瞬く間に薄れていく。
「そんなこと言うために呼んだんですか?」
ため息混じりにそう言って歩き出そうとした瞬間。
「ごめんね。俺のわがままで、勝手に同じ班にしちゃって」
そんなことを言われて、再び視線を彼に向けた。
「いや……それは……別に」
どうしよう。
うまく言葉が出てこない。
最初は確かに嫌だった。
だけど……天海くんが、私の好きなことを知ってくれてたおかげで、今日は、日葵ちゃんと美夜ちゃんと……。
どう伝えようか、ぐるぐると考えていると。
いきなり、目の前に淡い紫色の毛並みが現れた。
「へっ……」
「月雨ちゃんにあげる」
天海くんはそう言って、私の右手を取るとそのひらにポンとふわふわのミニマスコットを置いた。
「しそっ……!」
思わず弾んだ声が口から出る。
小さいカピバラが頭に乗っているしそ。
さっき私が動物園のガチャガチャで引けなかったものだ。
「どうして……これ」
「スタンプラリー終わったあと、自由時間あったでしょ?その時に戻ったの。月雨ちゃんの最推し、引けて良かった」
「ちょっと待ってください。今、代金をっ」
しそを受け取って、慌てて背負っていたリュックから財布を取ろうとしたら、その手を天海くんに止められる。
「ストップ。これはお詫びだから。だから、強引に班に入れたこと、許して?」
「……」
許してって……。
ずるい。
だって……どう考えたって……。