となりの色気がうっとうしい
天海くんが、器用に私のバッグについていた金具にしそのマスコットを通そうとするので、慌てて手でふさぐ。
「に、似合わないのでっ、私には!」
「え?」
と、不思議そうにこちらを見た彼の手が止まる。
前にすれ違いざまに言われたことが、また脳内で聞こえてくる。
「こういうふわふわした可愛いもの……私には……」
「何言ってんの。似合うに決まってるじゃん。月雨ちゃんも可愛いんだから」
あまりにもまっすぐこちらを見て言うから、目を逸らしてしまう。
“可愛い“
彼にとってその言葉が、女の子に向ける挨拶のようなものなことはわかっているはずなのに。
なんで今……ドキッとしてしまったんだろうか。
「天海くんに言われても……嬉しくないです」
「ひどい。とにかくつけるからね?」
どうしてかそれ以上、止めることはできなくてされるがまま。
「よし。ほら似合う」
ころん、とバッグの横でしそが揺れるのを見て、満足そうに笑う天海くん。
「しそも嬉しそう。『やったー!これから月雨ちゃんと一緒にいられる〜』だって」
「ふはっ」
突然の天海くんのモノマネに、吹き出してしまう。
「全然似てないですよ。誰ですかそれ」
「……」
笑いを落ち着かせながら、チラッと天海くんを見ると、なぜかフリーズしてこちらを見つめている。
「天海くん?」
「……あっ、しそだよ。しそ」
「そんな声じゃないですから!」
「てか、声ついてるんだ」
「ショートアニメやってますよ?」
「へー。どこで見れる?リンク送ってよ」
そう言っておもむろにスマホを取り出す彼の耳が、赤く染まっていることに気付く。
今日の遠足で日焼けでもしたのかな。
「月雨ちゃんの連絡先ちょーだい?」
「えぇ……?」
「その子、誰からもらったの?」
天海くんは、クイッとわずかに片方だけ口角を上げて、意地悪にそんなことを聞いてくる。
ほぼ脅しだ。
でも、しょうがない。
今日だけは、たくさん良い思いをさせてもらったから。
「……わかりましたよ」
しぶしぶ、私もスマホを取り出して、天海くんと連絡先を交換する。
「それにしても、一回で引くなんてすごいですね」
「うん。天海くんは、日頃の行いがいいからネ」
どこか得意げな表情に、やっぱりむかつく。