となりの色気がうっとうしい
「か、奏……?」
返事はない。
「……起きてる?」
しばらく待って見ても、反応はない。
「……この間は、怒鳴ってごめんね。なんの連絡もなしに、家に急によく知らない人がいたらびっくりするよね。奏の気持ち、考えずに、あんな言い方してごめん」
「……」
「あっ、実はね、今度の週末、友達とみんなでピクニックすることになってるの。月ノ雫広場で」
「……もし、良かったら奏も一緒に行かないかな?みんな、奏に会って見たいって言ってて……短い時間だけでもって……」
「……」
あまりにも、反応がなくて胸の前で手を握る。
やっぱりダメか……。
「ごめん、いきなりすぎるよね」
扉の向こうにいる奏は、今、どんな顔をしているんだろう。
やっぱり、私とは話したくないかな。
もう、無理なのかな。
「……おやすみ、うるさくしてごめんね」
そう言って、扉からゆっくり離れる。
数歩歩いて、自分の部屋のドアに手をかけようとした瞬間だった。
ガチャと、背後から、扉が開く音がした。
すぐさま振り返ると、ゆっくりと開いた扉の隙間から、奏が顔を覗かせていた。
「……奏」
伏せがちな目。
天海くんとばったり会った時の彼女とは違う。
どこか気まずそうな表情。
「友達って……あの男?」
あの男って……。
どうしよう。
ここで天海くんの名前を出せば、バタリとドアを閉められそう。
天海くんも来る予定だけど……これはあくまで、日葵ちゃんと美夜ちゃんが計画してくれている話で……だから……。


