嘘に恋するシンデレラ

 動揺が隠せない。
 心音は先ほどの比じゃないくらいに高鳴っている。

「僕がこころに疑われるのも仕方ないとは思う。確かに僕はきみに嘘ついてたし、やりすぎたこともあったから」

 星野くんはスマホを下ろし、わたしの目を覗き込んだ。

「でも、こころの言い分はまったく反対のことも言えるよね? すべてはあいつが僕を落として、自分を信用させるためにしたこと」

 両肩に彼の手が添えられる。
 もうそれを突っぱねられる余裕はない。

「じゃあ……教えて。星野くんは何を隠してるの?」

 そう尋ねると、わずかに目を見張る。
 姿勢を戻した彼はそっと椅子に座り直した。

「────写真についてはDVの証拠になればと思って集めてた。きみの怪我の写真もある。覚えてないと思うけど、記憶を失う前のこころが自分で言い出したことだよ」

「わたしが……?」

「そう。この際だから言うけど、ていうか、もう気づいてると思うけど……僕がきみの恋人っていうのは嘘。あいつが元彼っていうのも」

 その点の愛沢くんの言い分は正しかったんだ。
 衝撃が抜けきらないまま、わたしも浅く腰を下ろした。

「ふたりの関係はほとんど終わってたけど、愛沢は別れ話を受け入れなかったんだ。そこで、きみは僕を頼った。別れられるように協力して欲しい、って」

 じわじわと少しずつ、頭が締めつけられていく。
 記憶の蓋が開きそうなのに、何かにつかえているような感覚だった。

「ハンカチは……あれは、僕の血だよ。怪我したときにあれで押さえてたってだけ」

「どんな? まさか、隼人にやられたんじゃ……」

「ううん、そうじゃない。大したことないからこころは気にしなくていいよ」

「大したことないって、あんなに血が出るほどなのに……」

 星野くんは力なく微笑んでみせる。

「本当に気にしないで。それからGPSだけど、あれは屋上でも言った通り。何かあったときいつでも駆けつけられるようにと思って」

 信憑性も説得力もある答えだった。
 最初についた嘘が綻んだから、諦めがついて本当のことを語ってくれたのだろう。

「……ほら、こういうのも」

 ふいに腕を掴まれたかと思うと、するりと袖をめくられる。
 魔法が解けて、痛々しくしか感じられない痣があらわになった。

「あいつ、何も変わってないんでしょ」

「…………」

「信じたいと思うのは防衛本能だよ。こころは、優しすぎるせいで自分を苦しめてる。そばにいても、ずっと裏切られ続けるだけだ」
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