嘘に恋するシンデレラ

「別にいいけど。珍しいな」

 たまには、と答えかけて慌てて飲み込む。
 記憶が曖昧であることにしておくために、笑って誤魔化すに(とど)めておいた。

「じゃあ俺、そろそろ戻るな」

 そう言って隼人が立ち上がり、少しだけ緊張の糸が緩む。

「あ、そうだ」

「なに……?」

「もしかしたらあいつが接触してくるかもしんないけど、まともに相手すんなよ。おまえをたぶらかそうとしてるだけだから」

 警告というよりは牽制(けんせい)でもするかのような鋭い眼差しを受け、思わず怯みつつも頷いた。

「分かった」

 彼が教室を出ていったのを確認してからスマホを取り出す。
 星野くんとのトーク画面を開いた。

【とりあえずはやり過ごせた。昼休みに学食で話すことになったよ】

 返信を待たずして、そのアカウントごと削除しておく。

 隼人は不定期でスマホをチェックしてくるけれど、これまでの流れからして昼休みはほぼ確実。
 そのために備えておかないと。



 つつがなく昼休みを迎え、わたしたちは学食へ向かった。

 少し離れた位置に星野くんの姿があるのを確かめてから、隼人と向かい合う形で座る。
 昼食もそこそこに彼は口を開いた。

「俺たちさ、確かに付き合ってたけど結構こじれてたんだよね。あんまりうまくいってなかった」

「え」

 意外な語り出しに思わず驚きの声がこぼれる。

「完全に俺が悪い。俺のせいで、なんだけど」

 苦い表情で言う。
 自分が悪いと認めるなんて、それもまた意外だった。

「そこに星野がつけ込んだんだ。おまえはまんまとあいつに騙されて、俺に“別れよう”とか言い出したわけ」

「…………」

「そのせいで俺も余計むきになってた部分があったんだけど……。もっかい向き合って、そしたらおまえも目覚ましてくれて。星野の嘘と目的を暴こうってなった矢先にこれだよ」

 無意識のうちに、訝しげに眉を寄せていた。

(そうだっけ……?)

 確かに隼人の家で話したそのとき、星野くんが嘘をついていると判明した。
 不信感を募らせはしたけれど、そんなふうに彼に迫るような流れにはならなかったはずだ。

「だからさ、焦ったあいつがおまえを突き落としたんだと思う。都合の悪いことを探られないように」
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