嘘に恋するシンデレラ
真剣そのものの隼人に気圧され、星野くんの心象や彼と築いてきた前提がぐらついてしまう。
(そんなはずないよね……?)
もっとオーバーに驚いたりするべきなのだろうけれど、彼が素直に打ち明けたことが思いがけず、何だか気が抜けてしまった。
隼人の口調が淡々と澱みないからつい事実と錯覚してしまいそうになるけれど、そもそも星野くんからしてみれば虚構でしかない。
どちらの手を取るかで、それこそ前提が180度変わってしまう。
どちらかは確実に嘘で、見誤れば待っているのは破滅────そのことを痛感した。
「ただ、これから思い出してく中で誤解されたくないから先に言っとく。俺は、はっきり言って最低だった」
おもむろに隼人が切り出す。
「おまえに手上げたりしてたんだよ。普段から結構縛りつけてたし、重いどころじゃないって自覚はしてる」
そのことまで正直に話してくれるなんて、とますます驚いてしまう。
印象操作のためには口にする必要もないのに。
「もうしないって約束したのに、それも守れないで散々傷つけた」
苦しげな声色に、ふいに喉の奥が締めつけられた。
涙が滲んでしまいそうになって慌てて下を向く。
「ごめんな。本当に悪かった」
「……どうして、話してくれたの? 隼人にとってはマイナスなのに」
「だからだよ。だから、おまえは覚えてなくても俺から伝えなきゃって思って」
思いがけず胸を打たれてしまう。
惑わされる前に、そのまっすぐな眼差しから逃れるべく苦く笑ってみせる。
「……ごめん。何か一気に色々聞いてびっくりしちゃった。自分のことじゃないみたいで混乱してる」
「……まあ、そうだよな」
そう言って眉を寄せた隼人は、ふらりと逸らした視線を落とす。
何を考えているんだろう。
以前にも増して不透明で読めない感じがする。
けれど、ほとんどすべてを打ち明けてくれたのは意外だった。
それでも一度は彼を受け入れたわけだし、その事実が保証となっていたのなら、隼人にとって不都合な過去じゃなくなった。
むしろ隠さないでおけば、誠実な印象を与えられる。
そういう打算のもとでとった行動なのかもしれない。
そんなことを考えていると、す、と目の前にてのひらを差し出してきた。
ほとんど反射的にスマホを取り出して渡す。
(大丈夫、見られて困ることなんてない)
星野くんのアカウントも、彼とのやり取りも消してある。
ほかはそもそも相変わらず空っぽだ。