皆の推しメン(ズ)を私も好きになりました

『今外に…出ればいいですか?』
『そうだね直ぐ終わるよ。一回電話切るからね。』


電話を切って豆電気の部屋の中、いつものことなのにやたらと静けさを感じる。

嫌だな…何言われるんだろ。

靴を履いてドアをゆっくり開け、歩道に出る割れた石畳を歩いていくと、見たことある車が赤いランプを点滅させて路駐している。

車の横に男の人。
秀紀さんが立っていた。

足取り重くて、近づいていくのも凄く緊張している。



「あ、こんばんは。ごめんね急に。」
「…いえ。どうしたんですか?」


秀紀さんが待っていたのか、ある雑誌を私に開いて見せる。



「これ、明日発売の週刊誌。君たちの記事が三ページにも渡って掲載される。」
「えっ?」
「写真も沢山撮られてるよ。ここの近くの公園だね。見てもいいよ。」



雑誌を渡され、自分の手で開かれたページを見ると大きな白黒写真に映る私と黒川君。私の目には黒い線が被せてあるが楽しそうにしている二人の顔。

抱き締められている所。

おでこにキスをされていてる所。




見出しには


【大大スクープ!!今が旬のタレント瑠色!!深夜に彼女と密会!?】
【瑠色の彼女は一般人の高校生!!】


と、大きな文字で書かれていた。

「こ、これ!?」
「そう。君たちの記事。」

動揺しながら記事を読むと、彼女は瑠色がブレークする前からの付き合いや、彼女は学年で一番の美女だの嘘だらけの文章で「なっ…」と、言葉を失う。

「明日からのテレビやネットは、君たちの話題で大盛り上がりだろうね。ハハッ。」

笑った筈の秀紀さんの顔が、全く笑っていなくて読んでいた雑誌を思わず落としそうになる。

「…………。」
「あ、聞いてると思うけど、瑠色の海外進出が決まったんだ。うちの事務所もお祭り騒ぎ。ちなみに海外進出はまだ超極秘だから、絶対誰にも言わないでね。まぁ幸子ちゃんなら言う人も居ないか。」
「……それは。」




ストレートに嫌味を言われたのか、思わず言い返しそうになるのをグッと堪える。

だけど、この後言われた言葉は私にとって言い返す言葉など全く出来ないこと。


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