双子の推しと一つ屋根の下!【noicomiマンガシナリオ大賞応募作】

第2話 オフの2人を見れるなんて

■場面転換(自宅、リビング)

<それ以降、母と雄二さんは籍を入れ、私は「日比谷 日奈子」になった。
仲の良い友達にだけは彼らが兄になったことを教えたが、大層羨ましがられた。
セキュリティのしっかりとしていて、2人の事務所の近い目黒の大きな一軒家に引っ越すことになる>

全国ツアーが終わり、家へと帰ってきた蓮と凛。

日奈子「お帰りなさい。お疲れ様、2人とも。
配信チケット買って、家でライブ見てたよ」

日奈子が言うと、凛が口を尖らす。

凛「そんな、わざわざありがとな!
日奈子が学校の試験期間じゃなければ、関係者席に招待したのにさー」

蓮「残念だったよね。次のツアーは必ず連れてってあげるからね」

ぽんぽん、と日奈子の頭を撫でる蓮。

<ぎゃーーーー!蓮様の頭ぽんぽん!試験頑張ったご褒美すぎるーーー!>

内心叫びながら、日奈子は真っ赤な顔を隠すようにうつむき、

日奈子「楽しみにしてるね」

と微笑む。
凛が手に持っていた大量の袋をテーブルの上に置き、中身を並べていく。

凛「じゃーん、日奈子のために、全国のライブの場所でご当地お土産を買ってきたぞ!」

日奈子「え、嬉しい!」

凛「だろー?んとねー、北海道の苺ホワイトチョコ、仙台のずんだ餅、
名古屋のあずきトースト味ワッフル、大阪のチーズケーキ、広島のお好み焼きソース味スナック、
福岡の博多明太せんべい、沖縄の紅芋タルト、あとー」

次々と袋の中から取り出す凛。テーブルが埋まってしまう。

日奈子「す、すっごい量…」

凛「うん、全部日奈子にあげるからな! お菓子好きだろ?」

ニコニコと笑いながらお菓子を差し出す凛。

<あー底抜けに明るい凛くんの笑顔最高…ご飯3杯いけるわ!>

蓮「やれやれ…そんなに買っても食べきれないだろって、俺は止めたんだけどね…」

凛「なんだよ。お前には一個もやんねーからな!」

呆れる蓮に、凛が頬を膨らます。

凛「俺からのお土産はこれ」

凛は懐から数枚のポストカードを取り出す。

日奈子「ポストカード…?」

凛「うん。行った場所の綺麗な景色が写っているポストカードを買ったんだ。
僕の観た景色を、日奈子にも感じて欲しくて。今度一緒に見に行こうな」

優しく微笑む蓮。

<穏やかな蓮くんの優しさ…!そして次は一緒にという約束付き…!え…天使か…?>

2人からの優しさに日奈子は照れてしまう。

日奈子「2人ともありがとう、忙しいライブの合間にお土産買ってくれるなんて…」

凛「可愛い妹のためなら当たり前だろ!」

蓮「寂しい思いをさせたかなと思ってね」

<ああ…見た目だけじゃなくて、心も綺麗な双子…神様同じ時代に生まれて幸せです>

心の中で涙を流し神に感謝する日奈子。

日奈子「とりあえず、2人とも疲れてると思うからお風呂入ってね。沸かしといたから」

凛「おう、サンキュー」

蓮「久々の家だし、リラックスさせてもらうよ」

2人が自分の部屋に向かったのを見て、よろよろとソファに座り込む日奈子。

<ああ、毎度毎度、心臓が持たない…!>

今あったことを繰り返し思い出し、にやける日奈子。


■場面転換(自宅・ダイニング)

蓮「ふう…」

少し疲れた様子で、蓮が部屋着とメガネ姿で本を読んでいる。
ホットココアの入ったマグカップを飲む。

近くのソファに座っている日奈子が、横目でその姿を見ている。

<蓮くんのパーカーにメガネのオフ感!これはファンではなかなか見えない姿…!
コーヒーが飲めないからホットココア飲んでるのも可愛い…ギャップ!>

凛「あーさっぱりしたー」

上半身裸の短パン姿で風呂場から出てくる凛。
その姿を見て顔を隠す日奈子。

日奈子「きゃ!」

蓮「おいおい…服ぐらいちゃんと着てこいよ…」

凛「暑いんだから良いだろ別にー」

冷蔵庫から炭酸水を出して飲む凛。首にかけたタオルで顔を拭く。

<ああ…引き締まった体…ギリシャの彫刻みたい…!
そして濡れた髪…水も滴る良い男すぎる…!>

顔を隠してはいるが、指の隙間から見ており目がハートになっている日奈子。

服を着て、おもむろにフライパンを取り出す凛。

凛「なんか小腹減ったし、軽く飯作るわ」

キッチンに立って料理を始める凛。
慌てて駆け寄る日奈子。

日奈子「あ、お腹減ってたんだ…?遅いから夕飯食べてきたかと思ったの。
私が作るよ…!」

凛「いーのいーの。食べたけど移動中に適当に軽食だったからさ。
日奈子は座ってて」

微笑む凛に促され、キッチンのカウンター席に座る日奈子。
手際良く料理を作って行く凛。

日奈子「凛くんて、ほんとお料理上手だよね」

凛「まあなー。ほらうち父子家庭だったじゃん?
父さんあんま家いなくて、料理作るのは昔から俺の仕事だったから。
逆に俺は掃除できないから蓮が担当」

蓮「そう。未だに靴下逆さまに脱ぐのと、ペットボトル床置きするのが直らない」

凛「あーそれはごめんなー!」

ため息をつく蓮に、すまんと笑って謝る凛。

<大変な家庭環境の中で、培った双子の絆…!お、推せる…!>

日奈子はキラキラとして2人を眺める。

凛「ほら、できた! 特製オムライス!」

ふわふわの卵に包まれたチキンライスのオムライス、付け合わせのサラダも美味しそう。

凛「日奈子、夜食にちょっと食べるだろ?こっちの少ない方、一緒に食べようぜ」

日奈子「え…確かにちょっと小腹空いてたかも…いいの?」

凛「もちろん! 蓮は…」

蓮「俺はココア飲んだから大丈夫」

凛「そう言うと思った。フルーツだけつまみなよ」

蓮「そうする」

テーブルにオムライスとサラダ、フルーツを並べる凛。

凛「うーんうまそうな匂い! いただきまー……と、SNSにあげる写真撮るか」

凛が食べようとした手を止めてスマホを取り出す。

蓮「冷めるから後でいいだろ?」

凛「ツアーが終わったあとだから、SNSの更新待ってるファンも多いんだよ。蓮もやりなよ」

蓮「俺はSNS苦手…。そのかわり配信のための曲作ってるから」

凛がオムライスを写真に撮り、スプーンを持つ。

凛「よし、いただきまーす!」

日奈子「いただきます。…美味しい!」

凛「うん、自信作だな」

笑顔で食卓を囲む3人。

<推し2人との生活。たわいの無い食卓のシーンが、夢のような時間だ>

<でも、彼らが国民的アイドルということを、思い知らされることになるーーー>


■場面転換(SNSを見た世間の声)

凛のあげたSNSのオムライスの写真をスマホやタブレットで見ている全国のファン。

ファン1「凛くん!ドームツアーお疲れ様!」

ファン2「オムライス美味しそう、私も食べたい♪」

ファン3「待って、グラスに人影が映ってない…?」

写真を拡大し、グラスに写っている女性の影をピックアップするファン。

ファン4「えなにこれ。女?」

ファン5「彼女?ツアー後に家に女連れ込んでる!」

ファン6「最悪、誰よこれ!マネージャは男のはず」

写真の相手を特定するためのアンチコメントが延々と書き込まれていく。
リツイートといいね数がどんどん増えていく。

そんなことも気がつかず、和やかに食事しながら笑い合う3人。
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