双子の推しと一つ屋根の下!【noicomiマンガシナリオ大賞応募作】

第3話 謝罪生配信

第3話

◆場面転換:放課後の高校校舎

キーンコーンカーンコーン(終礼のチャイム)

<授業終わった! 今日はジェミニのインスタライブが夕方からあるから、まっすぐ家に帰って部屋で生配信観なきゃ〜!>

友人1「あ、日奈子、ちょっと……」

日奈子「ごめん! 今日は早く帰るんだ、また明日ねー!」

カバンを持ちご機嫌に教室を出ていく日奈子。

友人2「行っちゃった……。日奈子、気が付いてないっぽいね」

友人1「ね、炎上してるけど大丈夫かな……?」

友人のスマホの画面には、SNSに『日比谷凛の投稿写真に女!?』の文字。


◆場面変換 日奈子の自宅

日奈子「ただいまー!」

(あれ、靴が凛くんと蓮くんのと、もう一足ある……誰か来ている?)

玄関に男性用の革靴が置いてあるのに気がつく。
静かにリビングの扉を開ける日奈子。

マネージャー「かなりファンの間で広まってしまっている。早めに対処しないと」

凛・蓮「………」

(マネージャーさんが来てる。なんか不穏な空気だけど大丈夫かな……?)

カタン……(ドアの開く音)

蓮「日奈子ちゃん、おかえり」

凛「ああ……おかえり」

額に手を当て落ち込んだ様子の凛、いつも通りの蓮。

マネージャー「あの子で間違い無いのか」

凛「もちろん。彼女いないし、実家に女の子連れ込んだりなんしてねーよ…」

蓮「昨日この場に僕もいました。凛は嘘ついてません」

ソファに座っているスーツ姿の男性マネージャーに問い詰められ、意気消沈している凛と、毅然と答える蓮。

日奈子「二人とも、どうしたの……? これからインスタライブじゃ」

マネージャーが会釈をして、ソファに手招きする。

マネージャー「あなたが義妹の日奈子さんですね。よかったら説明しますので、こちらへ」

ソファに座ると、SNSをプリントした紙が置かれている。

マネージャー「昨日、凛があげた写真にあなたが写り込んでいたようで、ネットで騒がれています」

日奈子「ええ…!?」

マネージャーがSNSを印刷した紙をて日奈子に渡す。

『凛くんのあげたオムライスの写真、女が写ってる!』
という題名とともに、凛が自撮りで昨晩作ったオムライスと撮っている写真。
湯気をあげているオムライスを、スプーンですくっている。

次のページでは、銀のスプーンを拡大しまくり、髪の長い女の姿が反射しているところに丸印がついている。
顔までは詳しく判別できないが、姿形は若い女性に見える。

日奈子「これ、昨日のオムライス食べた時の……!」

日奈子が驚きながら、もう一枚の紙に目を落とすと、炎上しているコメント欄のコピー。

『彼女の手作りオムライス?』
『ライブの後に女連れ込んでるとかありえない』
『まじ無理無理、もうファンやめる……』
『私は蓮くん派だからセーフ、凛邪魔。早く蓮くんソロでやってほしい』
『グッズ捨てた。金と時間返してほしい』
『凛ブス専乙w w w』

日奈子「………!」

悪口で荒れた書き込みに、日奈子が胸を痛める。

日奈子「ご、ごめんなさい。私のせいで……」

蓮「日奈子ちゃんが謝る必要はないよ。
俺だって止めなかったし、そもそも、写真拡大してまで調べるファンが異常だ」

凛「いや、ごめんな。俺が軽率だった。
ライブ後で疲れて気が抜けてたかも……事務所に確認してもらってから上げればよかった」

日奈子をフォローする二人。
マネージャーはため息をつき、腕を組む。

マネージャー「とにかく、ファンに説明しなくちゃダメだ。
早くも事務所には問い合わせが殺到してるし、ファンクラブの退会者もどんどん出ているらしい」

凛「……俺のアカウントにも、批判のDMめっちゃ来る…はあ……」

スマホを眺めながら落胆する凛。

蓮「過激なファンのせいでここまで炎上するとはね。まだ全国ツアーのライブも残ってるのに」

マネージャー「初期対応が肝心だ。アイドルに陰湿なアンチがつくのは、スポンサーも嫌がるしな」

蓮とマネージャーの相談に、日奈子が考え込む。

(『過激なファン』、『陰湿なアンチ』か……私も、そうだったのかも)

毎日録画した番組を見て、生配信に張り付いて、女子アナとの距離が近いとギャーギャー騒いでいた自分を思い出す。

日奈子「確かに少し悪質だけど……ファンの方たちを、悪く言わないでほしい…です」

凛、蓮、マネージャーが驚いて日奈子の顔を見る。

日奈子「彼女たちもきっと、ジェミニの二人から毎日元気をもらって、
二人を推すことで学校や仕事や家事を頑張れているんだと思います。
だから、彼女がいるかもって思ったらすごく落ち込むし、悔しいし、裏切られた気分になっちゃうだけで」

(私も同じ立場だったら、ジェミニロスとかいって、学校に行く気も起きないだろうな……)

蓮「……そうかもね。俺たちをいつも支えてくれる、大切なファンだ」

凛「ああ。でも、どうすればいいんだ」

日奈子「二人の口から、真実を聞きたいって思う。そしてそれを受け止めたいって思う」

日奈子の言葉に、凛と蓮が頷く。

凛「マネージャー、今から生配信してもいい? 素直に伝えたい」

マネージャー「……わかった、発言には気をつけろよ。君も、それでいいのかい」

日奈子「はい、大丈夫です!」


◆場面変換:リビングからの生配信の画面

カフェで女子高生たちがスマホを眺めながらジェミニの生配信を見ている。
赤ちゃんを抱っこした主婦や、会社帰りの電車の中のOL、自室のデスクトップパソコンから見ている大学生。

時間になり、リビングのソファに座った凛と蓮が映り生配信が始まる。

蓮「今日の生配信は、みんなに伝えたいことがあります」

凛「俺のSNSを見て、驚いたり、嫌な気持ちになった人も多いと思う。本当に、すみませんでした」

凛と蓮が頭を下げる。

コメント
『凛くん悪くないよ!謝らないで……』
『黙ってて凛ファン、早く理由教えて』

凛「オムライスを食べている俺のスプーンに、女性の姿が映ってたって話、これは本当なんだ」

コメントは『どう言うこと?彼女!?』と荒れている。
蓮と目を合わせる凛。

凛「写っていたのは、新しくできた俺たちの妹なんだ」

スマホ画面で生配信を見ているファンたちの驚いた顔。

凛「俺たちが、父子家庭で育ったことは、みんな知ってるよな」

蓮「父さんは、僕たちを育てるために忙しく仕事していた。
そんな父さんを楽させたくて、アイドルで独り立ちすることを決めたんだ」

凛「ああ、そしたら、この前父さんが結婚したい女性ができたって紹介してくれてさ!
優しそうな女性と娘さん。写真に写っていたのは、最近できた俺たちの妹だよ」

凛が合図をすると、日奈子が歩いてソファの前に来て、二人の間に座る。

日奈子「は、初めまして。ジェミニの二人の義理の妹となりました、日奈子と言います。
ファンの皆さん、不安にしてすみませんでした」

緊張しきっている日奈子。

コメント
『妹!?』
『確かに写真の子と似てる』
『連れ子ってこと?そんなうまい話ある?』

日奈子「……凛くんも蓮くんも、テレビやステージの時と全然変わらない、裏表のないまっすぐな人です。
急に家族になって驚きましたが、キラキラ輝く彼らを、陰ながらサポートしたいと思っています!」

日奈子の言葉に、驚く凛と蓮。

日奈子「これからも、自慢の兄たちを応援よろしくお願いします!」

凛「……そういうこと! 驚かせてごめん。
でも、ファンのみんななら俺たちだけじゃなく、俺たちの家族も応援してくれるよな?」

蓮「新しい妹も、お母さんも大切な家族だから、どうか傷つけるようなことを言ったり、したりしないで欲しい。
俺と凛からのお願いです」

凛「家族だけじゃなく、ファンもみんな大切だし、大好きだからさ!」

日奈子を両端で挟みながら、画面に向かって満面の笑みでピースする凛、穏やかな笑顔で礼する蓮。

コメント
『素敵な妹さんだね』
『めっちゃ羨ましいーーー!! 私も妹になりたい!』
『素直に言ってくれてよかった、安心した』
『妹ちゃんも推せる!』

温かいコメントが流れてくる。

ファンから応援されて、生配信が終了する。

マネージャー「お疲れ様。コメント見てたけど、ファンは驚いてたけど信じてくれたみたいだし、
事情を知っておおむね肯定的な意見が多そうだな」

凛「そっか、よかった」

蓮「日奈子ちゃんが出てくれたのがよかったのかもね。勇気を出してくれて、ありがとう」

凛「本当に! 俺泣きそうになったよ」

日奈子「あはは、力になれてよかった」

マネージャー「でも大変だぞ。きっとすぐに通っている学校も特定されるし、嫌がらせをされるかもしれない。
未成年だし、親御さんに許可をとってからにするべきだったな……」

凛「大丈夫、日奈子のことは俺が守る!」

蓮「炎上させた本人が言うなよ」

凛「ううっ! ……ごめん」

蓮「でも俺も同じ気持ち。日奈子は大事な妹だから、なんかあったらすぐに言うんだよ」

日奈子「うん、ありがとう。凛くん、蓮くん!」

日奈子の笑顔を見て安心した二人。
蓮は前から日奈子の頭をポンポンし、凛は日奈子の肩に額をつけてハグをする。

(ぎゃーーー!! 最高のファンサです!! 一番の強火痛ファンが私なんですけど!!)

日奈子が心の中で叫びながら赤面する。


◆場面変換 朝、日奈子の高校教室

友人1「ねえ!昨日の生配信観たよ! まじでジェミニの妹になったの!?」

日奈子「う、うん……黙っててごめんね」

友人2「日比谷って名字になったけど、まさか本当にジェミニがお兄ちゃんになるなんて……」

廊下には、日奈子目当ての同級生が教室を除いて騒いでいる。

他クラス女子「ねえ、二人のサインもらってきて!」
他クラス男子「俺も俺も! 同じ事務所の女子アイドルのサイン欲しい!」

日奈子「あはは……お願いしておくね」

(秘密にしていたことが公表されて、これから大変になりそうだな……!)

すると、廊下から急に女子生徒の叫び声が聞こえる。
なんと校門から、凛と蓮が芸能人オーラを出しながら手を振っている。

日奈子「ちょ、ちょっとなんで二人とも!?」

凛「おーい、日奈子! なんかあったら俺たちに言うんだぞー!」

蓮「凛、声大きすぎ……迷惑だよ」

女子1「やば!!!生ジェミニかっこ良すぎるんだけど!!」

女子2「こっち見た!目ぇ合った!!」

凛「クラスメイトの皆さん、妹のことをよろしくなー!」

女子たち「きゃーーーー!」

蓮「はあ……今からレコーディングだから、帰る時間わかったら連絡するね」

日奈子「う、うん!」

マネージャーの車に乗り込みむ二人。
窓から手を振る凛、呆れたように会釈する蓮。

友人1「日奈子がいると、二人が父兄として来るってこと?最高じゃん!」

友人2「あんたと友達でよかったー!」

日奈子「あはは、これからも仲良くしてね」

(そうして、ジェミニと私が兄妹になったと言うことは、全世界に広まってしまったのだった)
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