双子の推しと一つ屋根の下!【noicomiマンガシナリオ大賞応募作】

第4話 彼氏ができたなんて聞いてない

◆場面転換 家の玄関

凛(俺に妹ができた)

家に帰った凛を出迎える笑顔の日奈子。

日奈子「お帰りなさい、凛くん!」

凛「ああ、ただいま!」

凛(親父が再婚し、血のつながらない義理の妹と一緒に住むようになった。
親父と弟の蓮と三人で過ごしてきたし、アイドルの養成所も男ばっかりだったから、
家に女の子がいるって、なんか変な感じだ)

◆場面転換 リビング

ソファに座ってテレビを見ている、部屋着姿の日奈子。

凛(汗臭くなくていつもいい匂いがするし、洗面所にはよくわからないクリーム?オイル?がたくさん並んでる)

凛「日奈子、今日のご飯はカルボナーラだぞ。半熟卵ものせといた!」

日奈子「うわー美味しそう!いただきます!」

凛(美味しそうに俺の作った飯を食べてくれるし、お土産のお菓子を喜んでくれる)

美味しそうに満面の笑みでカルボナーラを食べる日奈子。

凛(妹というよりは、たまにトイプードルやポメラニアンみたいな子犬に見えて、思わず撫でてしまう。
まだ出会って日は浅いけど、そんな日奈子は俺にとって大切な存在だ)

食卓の向かいに座り話しかける凛。

凛「日奈子、明日土曜で学校休みだろ?
俺も仕事ないから、どっか遊びに行かないか?」

日奈子「ジェミニが休みなんて珍しいね。嬉しい! ……あ、でも」

凛「ん?何か用事あるのか?」

日奈子「うん。明日はちょっと先約があって…誘ってくれてありがとう、またの機会にね」

凛「あ、ああ…。どこに行くんだ?」

日奈子「大したとこじゃないよ。じゃ、私準備があるから早く寝るね、ごちそうさま!」

食器を片付け、会釈して自分の部屋へ戻る日奈子。

パタパタ…バタン。

しゅんと落ち込む凛。

蓮「……あれは、日奈子ちゃん明日デートだね」

凛「うお! いつから居たんだよ蓮!」

ソファに座っていた蓮がひょこっと顔を出す。

蓮「ずっと前からいたけど。あのちょっと恥ずかしそうに口ごもった感じは、きっと男子と会うんだよ。女子会なら、言うはずだし」

凛「で、デート…?日奈子が…?」

蓮「まあ高校生だし、彼氏ぐらいできるでしょ。って、すごい顔してるぞ凛」

凛「かかか、彼氏って…!? あんな可愛いポメラニアンに、相手がドーベルマンみたいなやつだったら、危ないじゃねぇか…!」

蓮「なんで例えが犬なんだよ」

凛「変な男じゃないか心配だ…!俺の大切な可愛い妹が…!」

悶々と考え込む凛、呆れる蓮。


◆場面転換 朝、玄関

可愛く着飾った日奈子が玄関を出ていく。
日奈子「行ってきまーす!夕飯までには帰るね!」

凛・蓮「行ってらっしゃーい」

凛「ってことで…俺も尾行するぜ!」

黒いマスクにハットを被った凛が、やる気満々で日奈子の後をつける。
やれやれ、と呆れる蓮。


◆場面転換 渋谷ハチ公前

凛「待ち合わせ場所は渋谷のハチ公前か…。どこのどいつだ…!」

変装した凛がハチ公前を見張っている。
腕時計を見ながら待っている日奈子。

加藤「日奈子ちゃん、お待たせ!」

日奈子「加藤君。ううん時間ぴったりだよ」

加藤という黒髪メガネの青年が駆け寄ってくる。

凛(黒髪メガネ、清潔感のある好青年だな…。だ、第一印象は合格だな…。
だけど、少しでも日奈子に乱暴したり冷たくしたら、成敗してやるんだ…!)

加藤「じゃあ映画に行こうか」

日奈子「うん、楽しみだね」

凛(映画か…。王道のデートコースって感じだな。俺も同じ回の当日券を買おう。
二人が入って行ったのは三番スクリーンか。チケットは…)

『死霊の生贄〜地獄からの叫び声〜』

すごく怖そうなホラー映画のポスターを見て震える凛。

凛(げっ…!? ホラー映画かよ!?お、俺、大の苦手なんだよなぁ……!)

凛(でも、あの加藤とかいうやつ。ホラー映画を利用して怯える日奈子に付け入ろうと思ってるのかもしれないし…!兄として妹を守らなきゃな…!)

映画館の席に座り、怖がる日奈子の肩を抱く加藤の想像をする凛。

凛(チケット一枚購入だ!)


◆場面転換 上映中の映画館内

そして上映中…。

凛(前の席の二人は、仲良くポップコーンを食べながら見ているようだが…。
今の所怪しい動きはないな…。)

『あなたを…呪いに来たのよ…!』

凛「うわああああぁぁぁ!?」

凛(やばい、声出しちまった!黙らなきゃ…)

思わず声を上げてしまう凛。前の席の日奈子と加藤が驚いてビクッとなっている。

『地獄ニ落ちロ…!』

凛「ひいいぃぃぃ…!!」

凛(早く…早く終わってくれ…!こんなの心臓がもたないぞ…!)

自分の口を塞ぎながら、涙目になっている凛。


◆場面転換 映画館の外

加藤「ふーよくできた話で面白かったね。怖くて後ろの席の人、すごい叫んでたね」

日奈子「うん、そっちに驚いちゃったよ」

日奈子(どこかで聞いたことある声だと思ったけど、誰だろう…?)

楽しそうな加藤、不思議な表情の日奈子。

凛(はあ、はあ……。やっと終わった…汗びしょびしょだよ…。
二人は…次は雑貨屋さんか…。よかった…)

よろよろの凛が汗を拭きながら、二人を追いかける。

◆場面転換 雑貨屋の店内

東急ホンズで文房具やぬいぐるみを選んでいる加藤と日奈子。
商品棚の影から見守る凛。

凛(ええい、距離が近いぞ…!もうちょっと離れろ!)

ファン1「あのぉ…凛君ですよね?」

凛「え?」

ファン1「やっぱりそうだ! 大ファンなんです!サインください!」

凛「いや、人違いです…」

ファン1「マスクと帽子しても分かりますよ!写真お願いします!」

ファン2「あ、あたしも!」

ファン3「え、ジェミニの凛!?やばい!みんな来て!」

凛「わ、わかったから、店の迷惑になるから外に出てから…」

女の子に囲まれてしまい、焦りながら店の外に出るよう促す凛。

『渋谷の東急ホンズ前でジェミニ凛に遭遇!!』

ファンたちがSNSやストーリーで凛がいることを拡散する。
それを見て、ますます人が集まってくる。

加藤「なんだろう、入り口がすごい人だかりになってる…」

日奈子「芸能人が撮影でもしてるのかな?って、凛君…!?」

店から出てきた加藤と日奈子が、ファンに囲まれた凛を見て驚く。

凛「日奈子―!ごめん、こっそりお前を尾けたバチが当たったよ!」

半泣きの凛と驚く日奈子。


◆場面転換 家のリビング

凛「…ってことがあったんだけど。
結局、マネージャーに連絡して車で家まで送ってもらった…」

蓮「馬鹿凛。俺の方にもマネージャーから連絡きたよ。全く、休みの日に迷惑かけるなよな」

凛「ごめんよ…」

日奈子「お店出たら人だかりができてたからびっくりしたよ。
どうして凛君、あそこにいたの?」

ソファで呆れる蓮、平謝りの凛、不思議そうな日奈子。

凛「それは…。
日奈子に彼氏ができたんだと思って、どんなやつか気になったんだ…」

日奈子「ええ、かか、彼氏…!?」

頭を掻きながら白状する凛、驚き頬を紅くする日奈子。

凛「あのメガネの加藤ってやつ、彼氏なんだろ?
変なことされてないか? 男は狼なんだ、ポメラニアンは気をつけないと!」

日奈子「ポメ…?いや、加藤君は彼氏じゃなくて、普通のクラスメイトだよ」

否定する日奈子、ポカンとする凛。

凛「え?じゃあなんで映画や雑貨屋に二人で行ったんだ?」

日奈子「今度学校の文化祭で、私のクラスお化け屋敷やる予定なんだよね。
私たち文化祭実行委員だから、ホラー映画を見て研究して、雑貨屋で小道具買ってたの」

凛「ぶ、文化祭の…お化け屋敷…!?
あーそっかあ、そうだよなぁー!よかったー!」

ほっと安心してしゃがみ込む凛。

日奈子「そ、そんなに驚く…?」

凛「はは、よかった!日奈子が変な男につかまんなくて。
彼氏ができたらちゃんと兄ちゃんに相談すんだぞ!俺を超える男だったら、許す!
そうじゃなきゃ、許さん!」

日奈子「え、ええー?」

日奈子(凛君を超える男の子なんているわけないじゃん!私の最推し、人間国宝!
てか私の心配してくれたとか天使なの!?)

凛「よし、今日もお詫びに夕飯作るから、凛特製の油淋鶏だ!」

日奈子「中華も作れるの?嬉しいー!」

凛「蓮も食べるよな?」

蓮「もちろん。お腹減ったよ」

凛「よし、待ってろ!」

凛(はあ、日奈子に彼氏がいなくてよかった。
こんなに美味しそうにご飯を食べて、無邪気に笑う妹だから、大切にしたくなるんだよ)

油淋鶏を揚げながら、笑顔の凛。

凛(ずっと男の家族しかいなくて、男だらけの事務所にいたからわかんないけど。
これが、当たり前の兄から妹への愛情、だよな…?)

日奈子「おいしいー、凛君のご飯は世界一!」

美味しそうにご飯を頬張る日奈子。

凛「おお、いつでも作ってやるからな!」

満面の笑みの凛。
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