君との恋のエトセトラ
第二十七章 そばにいて欲しい人
また月曜日がやって来た。

月初めのミーティングの後、すぐに外回りに行っていた航は、打ち合わせを済ませてオフィスに戻った。

「戻りました」
「おお、河合。お疲れ」

課長が顔を上げ、続いて凛がコーヒーを持ってデスクに来た。

「お疲れ様です」
「ありがとう」

ネクタイを少し緩めて椅子に座り、凛の淹れてくれたブラックコーヒーを飲む。

チラリと目を向けると、パソコン作業をしている凛のデスクには、あのイニシャルボトルが置いてあった。

(まだ使ってくれてるんだ)

嬉しくなる反面、昨日のことが頭に蘇る。

(あいつと一緒に出掛けるなんて、もしかしてつき合ってるとか?)

プロポーズを断られたと言っていた木原は、だからと言って凛を嫌いになった訳ではない。

それどころか、何とか助けてやってくれないか?と航に声をかけてきた。

自分のことより凛のこと。
木原はきっと今も、凛の為にあれこれと気遣っているに違いない。

そして先月は自分を追い抜いて成績トップになってみせた。

腐ったりいじけたりせず、仕事に真剣に向き合って自分を高めている。

そんな木原が、もう一度凛に告白したら?

(今のあいつなら、惚れられるのも頷ける)

それと気になっていたことがもう一つ。

飲み会の後のカラオケで、凛は途中で席を立って帰って行った。
その目には涙が浮かび、木原が急いであとを追ったことにも、航は気づいていた。

おそらく凛を呼び止めて話をしたのだろう。
泣いている理由を聞き出して、慰めたに違いない。

そこで告白をしたのだとしたら?
君を守ると誓ったのだとしたら?

だから昨日二人は会っていたのだ。
凛がイエスと返事をして、初めてのデートに出掛けたのかもしれない。

そう思うと、航の心の中に何とも言えない寂しさが広がっていった。
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