君との恋のエトセトラ
第三十章 花開く蕾
二人の新生活にも慣れ、凛は航と穏やかで幸せな日々を送っていた。

「凛。おいで」

お風呂に入り、明日の朝食の下ごしらえをしてから寝室に行くと、ベッドの上で本を読んでいた航が声をかけてきた。

凛が布団に入ると、航は片肘で頭を支えながら凛の髪を撫でる。

「最近仕事はどう?MoonlightのSNSの更新、順調?」
「ええ。それに今は、セレーネの姉妹シリーズのイメージを考えてるの」
「姉妹シリーズ?」
「そう。梅田さん達が開発したんだけどね、セレーネ世代よりも少し手前の、メイクデビューする若い子向けなの。だからちょっと可愛らしさも入れて、憧れとか大人への第一歩、みたいなイメージで広告を考えたいって」
「そうなんだ」

航は少し考え込む。

「航さん?どうかした?」
「いや、うん。俺、今は高井不動産の方にばかり関わっていて、Moonlightは凛に任せ切りだったなと思って。一人で大丈夫か?」
「大丈夫よ。それに一人じゃないし。プロモやクリエイティブの人も助けてくれるから。特に橋本さんは、毎回打ち合わせにも同行してくれるの」
「橋本さん?って、誰?」
「航さん、知らない?クリエイティブ部の橋本さん。カッコイイから梅田さんが毎回キャーッてなってる」
「え、男なの?」
「うん、そうだけど」

すると航は急にあたふたし始めた。

「凛、その男と二人でMoonlightに行ってるのか?行き帰りも二人で?」
「それはそうでしょ?同じ会社で働いてるんだから。いつも営業一課の部屋に迎えに来てくれて、一緒に出掛けてるよ」
「なんだと?!俺の妻を堂々と迎えに来るとは。一体どういうつもりなんだ?」
「はい?それはもちろん、仕事のつもりでしょ?」
「だからって、凛と二人切りになるなんて…。気が気じゃない」

凛はポカンとしながら、しょんぼりとうつむく航を見つめる。

「ふふっ、航さんったらいじけてるの?なんだか可愛い」
「何ー?大人をからかったな?」
「航さんこそ。いつまで私を子ども扱いするの?」

そう言うと、凛は両腕を伸ばして航の頭を抱き寄せ、少し開いた唇で甘噛みするようなキスをした。

初めての凛からのキス。
大人っぽく艶めかしい凛の表情に、航の身体は一気に火照る。

「凛…」

航は凛に覆いかぶさり、何度も角度を変えて口づけた。

最後にチュッと音を立てて離れると、凛は肩で息をしながら、はあ…と色っぽい吐息を洩らす。

「子どもなんかじゃない。こんなにも俺の余裕を奪うなんて。凛、君を抱きたい」

航の瞳の奥に大人の色気が漂い始め、凛は思わず息を呑む。

航は凛の頬に触れていた手を下へと移し、そのまま凛の首筋を通って鎖骨を撫でた。

凛の身体がピクッと跳ねると、すかさずその背中の下に手のひらを差し入れ、また深く口づける。

夢中で航のキスを受け止めていた凛は、いつしかパジャマの下から潜り込んだ航の手に素肌の背中をスッと撫でられて仰け反った。

「んんっ…」

凛の口から甘い声が洩れる。
航は唇をずらして、凛の首筋にキスを繰り返した。
と同時に素早く凛のパジャマのボタンを外していく。

「あっ…」

身体にひんやりとした空気を感じて、凛は思わず声を上げる。

いつの間にかパジャマの上が脱がされていた。

慌てて両腕を交差して隠すと、航がそっと腕を掴んで開かせる。

「やっ、だめ」

思わずこぼれた甘い声は、ますます航の欲情に火をつけた。

凛の身体のあちこちに口づけ、なめらかな素肌に手を滑らせる。

「凛、俺の凛…。綺麗だ」

うわ言のように呟き、航は凛のピクンと身をよじる敏感で初々しい反応に酔いしれた。

自分の手によって、徐々に大人の色気をまとい始める凛。

閉じていた蕾が鮮やかに花開くように、綺麗な身体を余すところなく航に委ねていく。

やがて純潔を自分に捧げてくれた凛に、航は胸を震わせながら愛を募らせ、必ず生涯守り抜くと心に誓った。
< 162 / 168 >

この作品をシェア

pagetop