君との恋のエトセトラ
婚姻届を提出して数ヶ月が経ち、母の体調も普段通りに回復した頃、凛と航は再び長崎に来ていた。

「わあ、お姉ちゃんすごく綺麗!」

ウェディングドレスに身を包んだ凛に、杏がうっとりと見とれる。

今日は身内だけを呼んだ長崎での結婚式。
航が「お父さんに凛のドレス姿を見てもらおう」と言って、小さな地元の教会で式を挙げることになった。

「ありがとう、杏。これなら航さんの隣に並んでも平気かな?」
「もちろん!お姉ちゃん、なんだか急に綺麗になったね。幸せオーラ?」
「そうかも」

そう言って凛はふふっと笑う。

航に愛されて自信がついたのか、凛は自分でも一段大人の階段を上ったような気がしていた。

「凛、支度出来た?」

ノックの音がして、航が控え室に顔を覗かせる。

「はい」

振り向いて頷くと、シルバーグレーのタキシード姿の航が凛を見て目を見開いた。

「 凛…、すごく綺麗だ」
「ありがとう。航さんもとっても素敵」

二人は見つめ合って微笑む。

「じゃあ行こうか」
「ええ」

凛は航の手を借りて立ち上がる。

二人はそのまま腕を組んでチャペルに入場し、深々とお辞儀をしてからバージンロードをゆっくりと歩き始めた。

出来ることなら、父親と腕を組んでバージンロードを歩きたかった。
けれどその気持ちは、全て航が受け止めてくれた。

凛は母が持っている父の写真に目を向ける。

(お父さん、何も心配しないでね。私はもう大丈夫。航さんと一緒なんだもの。必ず幸せになるからね)

心の中で語りかけ、凛は写真の父に微笑んだ。
< 161 / 168 >

この作品をシェア

pagetop