君との恋のエトセトラ
「はい。これが招待状」

食後にソファでコーヒーを飲みながら、航は梶谷から受け取った封筒を凛に差し出した。

「日程は再来週の金曜日。夜の7時からだ。予定は大丈夫?」
「はい、大丈夫です。あの、会場のこのホテルって、もしかして5つ星の?」
「ん?ああ、そうだね」
「ひゃー!私、絶対に場違いです。田舎者は立入禁止区域ですよ!」
「何それ?そんなのないから」
「でもドレスコードとかに引っかかって、黒服のゴツい人に首根っこ掴まれて、ポイッて部屋からつまみ出されるでしょ?」
「は?どこで見たの?そんなの」
「風の便りで聞きました。都市伝説とかいう…。怖いよー、どんな世界なんですか?」
「こっちが聞きたいよ。どんな想像してるの?」

航は呆れるが、凛はまだ不安そうな顔をする。

「Moonlightの新作発表会ですよね?どうしよう、私、河合さんのお仕事に泥を塗ったりしたら…」
「大丈夫だって!君は俺のそばにいてくれるだけでいいから」
「河合さんの横に?爽やかイケメンの横に芋っ子女子…。イヤー!ダメです!」

何だよ芋っ子女子って、と航は眉根を寄せる。

「じゃあさ、当日会場に行く前に一緒にブティックに行こう。そこで支度を整えてから行けばいいよ」
「ブティック?」
「そう。パーティー用の服を揃えてて、そこでヘアメイクもしてもらえるから」
「芋っ子女子でも断られませんか?」
「大丈夫!芋っ子でもナスっ子でも断られないよ」
「何ですか?ナスっ子って」
「え、知らない」
「どうしてそんな適当なこと言うんですかー!やっぱり河合さんって嘘つき!」
「違うから!とにかく、ね?お願いだから行ってね」

航はひたすら凛を拝み倒した。
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