君との恋のエトセトラ
打ち合わせは1時間で終了し、良かったらランチでもご一緒にいかがですか?と誘われ、そのまま4人で近くのホテルのフレンチレストランにやって来た。

仕事の話というよりは気軽な雑談といった感じで、梶谷は航と、梅田は凛とそれぞれ会話に花を咲かせる。

「梅田さんって本当にメイクがお上手。とてもナチュラルでお綺麗です。さすがですね。私、せっかく梶谷さんからセレーネシリーズの全商品頂いたのに、使いこなせなくて」
「それはまあ、こういう仕事してるからね。最初は私もメイクの仕方なんて分からなかったわよ」
「そうなんですか?」
「うん。でもね、メイクってお料理みたいなの。絶対こうしなきゃいけない決まりなんてない。自分らしくアレンジしたり、隠し技を入れたり。凝り始めると楽しいわよ」
「へえ。梅田さん、色んなテクニックを持ってそう」
「ふふっ、必殺技とか?」
「はい。ここぞという時のキメ技。世の男性方を虜にしちゃうような」
「あはは!そんなのあったらとっくに結婚してるわよ」

デザートを食べ終わると、梅田は凛を化粧室に誘った。

「ちょっとメイク直させてもらっていい?」
「はい!お願いします」

梅田はバッグからパレットを取り出すと、手早く凛のメイクを整えていく。
アイラインをしっかりと入れ、手の甲でいくつか色を混ぜてからまぶたの上に載せる。

マスカラでまつ毛を長くクルンとカールさせ、頬には濃いめのピンク色を入れてからラメ入りのパウダーで軽く押さえた。

最後にリップをブラシで縁取ってから艶のあるグロスを塗る。

「出来た!どう?」
「わあ、これが私?」

鏡の中の自分をまじまじと見つめる。

「なんだか、視野が広くなったような…」
「あはは!マスカラでまつ毛を上げたからね」
「それにこのまぶたの色、絶妙ですね」
「そう。まつ毛の生え際はダークな色で、そこからだんだん明るくしてるの。自分ではよく見えないけど、うつむいた時に相手の男性が目元に釘付けになるわよ」
「ひゃー!なんて大人な世界!」

ひたすら感心していた凛は、ふと思いついて梅田に提案する。

「梅田さん。こういうテクニックを動画にして紹介するのはどうですか?」
「え、動画で?」
「はい。私みたいにメイク道具を揃えても使いこなせない女の子は結構いると思うんです。欲しいけど使えないだろうなって、買うのを躊躇しちゃったり。でも今みたいにやり方を教われば、買ってやってみようって思えます。このセレーネシリーズを使って、ワンポイントアドバイス、みたいな動画をSNSで発信してみてはどうでしょう?宣伝効果や話題性もあると思います」
「それいいかも!梶谷さんに話してみよう」
「はい!」

二人はテーブルに戻ると、早速梶谷に提案する。

「うん、いいね。コンテンツを増やしていけば、アクセス数もだんだん伸びるかもしれない。それにSNSならコストもかからないから取り組みやすいし。梅田さん、やってくれる?」
「はい、もちろんです!」

梅田は凛を振り返って笑顔で頷いた。
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