続・小さな恋のメロディ~貴方が好きです~

転落

あの日以来、パパと哲平は信じられないくらい仲良くなった。

パパはママが出て行った事も、選挙に落ちた事も、凄く落ち込んでいた事も、忘れた様に明るくなった。

そして、私と鳴海とパパの距離は想像以上に近付き、私は少し戸惑う。


「綾香か。これを哲平くんの所へ持って行ってくれるか?」

「哲平の所?」

「あぁ。家を知ってるだろ?」

「知ってるけど…。パパは?」

「ちょっと用事があってな」

「ふ~ん…」


哲平の家に行くのは、あの日以来だ…。
兵庫に住んでいて、花火に行ったあの日……。


「別に今日じゃなくても…」

「前から約束をしていたんだ。急に行く所が出来たからな…。頼んだぞ?」

「うん…」


パパが何かいつもとは違う気がした。

パパが出掛けた後、哲平の家へと向かう私は少し憂鬱になる。

哲平の家にどれだけ迷惑を掛けたか…。
私はまだ謝ってもいないのだから。

それでも哲平の家に向かい、哲平の家を見た時、時間が止まった。


あの小さな町工場…。
いつもお父さんが働いていた工場が少しだけ残されていて、新しく、大きく生まれ変わっていた……。


私の知らない哲平を見た気がした。

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