愛を秘めた外交官とのお見合い婚は甘くて熱くて焦れったい
「いいの?」

 ありがたい気遣いではあるが、名家の出身だと聞く義母の派手やかな暮らしぶりから想像するに、きっと手軽に購入できるような価格ではないはず。
 おいそれと受け取ってよいものではないだろうと、実物を目にする前から察してしまった。

「いいもなにも、それに合わせた小物まですでに購入しているそうだ。事前に知らせてきただけましだな。以前の母さんなら、突然ものだけ送りつけてきたところだ」

 苦笑する千隼さんだが、どこかうれしそうに見える。

 普段目にするのは義父との関係ばかりで気づいていなかったが、どうやら義母との間も少しずつ変化しているようだとほっとした。

「じゃあ、今回は甘えてしまおうかな」

 そこまでしてもらっては、断れない。むしろ、断ったら親不孝になってしまいそうだ。
 お返しをかねて、千隼さんも義父もそろった食事に誘ったら、彼女は快く応じてくれるだろうか。想像するだけで楽しみになってくる。

「ありがとう。そうしてくれると、あの人も喜ぶだろう」

 義母に応えることで、千隼さんもまた喜んでくれているようだ。食事会は絶対に開こうと、密かに誓った。

 それからは、時間のある限り出席者の情報を頭に叩き込んでいった。
 人の顔を覚えるのは得意とはいえ、外国の方の顔立ちとなるとやや難しくなる。
 それでも、この努力が千隼さんを支えることにつながると思えば、やる気が溢れてきた。
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