拝啓、親愛なるお姉様。裏切られた私は王妃になって溺愛されています
「またねー!」
「……」
 いつも通りの軽口で別れ、くるりとふたりに背中を向ける。
 ザイオンもラーラと別れの挨拶を交わしてから俺に続いた。
『ニャー《そなた、存外嫉妬深い男であったのだな》』
 しばらく通りを進んだところで、ザイオンが意外そうに告げた。
「煩いぞ」
 ザイオンの茶々を一蹴し、別れ際のティーナを思い浮かべる。
 彼女の唇は、たしかに「覚えておきます」とそう形を結んでいた。加えて、彼女が俺に向けた瞳には、明らかに熱が籠もっていたように感じる。
 ジェニスのことや、彼女の姉のこと、気がかりは多い。しかし、今ばかりはそれらを忘れ、浮き立つ思いで往来を闊歩した。
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