拝啓、親愛なるお姉様。裏切られた私は王妃になって溺愛されています
「なに、なんでもない。それよりティーナ、寒くはないか?」
 台詞の後半がうまく聞き取れずに首を傾げるが、ファルザード様はサラッと流して話題を移した。
「大丈夫です。後ろにファルザード様がいてくれるので、むしろ温かいくらいです」
「そうか」
 その後もファルザード様は、乗馬に不慣れな私を気遣いつつ、最速で王都まで駆けた。そして翌日の午後には、私たちは人々の大歓声を受けながら王都に帰還した。
 アゼリアの方角から王国中に広がった奇跡は、王都の人々も身をもって体感している。その功績をなし遂げたファルザード様を、王都の人々は『新王陛下』と呼び、称賛と敬愛の眼差しで出迎えた。
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