拝啓、親愛なるお姉様。裏切られた私は王妃になって溺愛されています
「そうは言っても、たまたま気づいてほんの少し手を貸しただけで、そんな大層なことはしていないのよ。それにしても、まさか王妃様に見られていただなんて。……なんだか恥ずかしいわ」
 今だけじゃない。我が家の話題の中心はいつだってお姉様だ。だけど、それを寂しく感じたことは一度もない。
 二歳年上のお姉様は、私の自慢だ。両親から受け継いだ光を紡いだような金髪と深く鮮やかなブルーの瞳、女性らしいまろみを帯びたスラリとした長身も。お姉様を彩るすべてが美しかった。さらにお姉様はピアノの名手でもあり、淑女然とした優美な立ち姿と機知に富んだ会話術で社交会の華と称えられていた。
 鉄錆びみたいな赤い色の髪と色褪せた青目、この国の女性の平均よりも小柄で貧相な体付きで、取り柄のひとつもない私とは対照的だ。
「本当に、マリエンヌは謙虚なんだから」
「まったくだ。いずれにせよ、私は誇らしい限りだよ」
 両親はふたりともお姉様とよく似た色の瞳を細めて、ほくほく顔だ。
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