拝啓、親愛なるお姉様。裏切られた私は王妃になって溺愛されています
 私もお姉様のように、ふたりの色彩を受け継いで美しく生まれついていたらと何度思ったか知れない。
 だけど、たとえ見た目をなぞらえたところで私はお姉様のようにはなれない。極度のあがり症で、社交の場に立つと表情が硬直し、まともに声も出せなくなってしまう。こんな性格では、見た目うんぬんのそれ以前。これでは社交界に出たところでいい笑いものだ。
 だから、その美貌ばかりでなく、内面に優れ、魔力の保有量だって多い。すべてにおいて完璧なお姉様は私にとって尊敬の対象であり、羨んだりやっかんだりする余地などない。
 私は扉の近くに立ったまま、しばし肩寄せ合って盛り上がる三人をまばゆい思いで眺めていた。
 すると、お姉様が立ちほうけている私に気づいたようで、笑顔で手招く。
「あら。ティーナったら、そんなところに立っていたの? さぁ、あなたもこちらに来て一緒にお茶をいただきましょう」
「はい、お姉様」
 私は慌てて対面のソファに腰掛けた。
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