拝啓、親愛なるお姉様。裏切られた私は王妃になって溺愛されています
 薄目で私を見上げるラーラの金色の瞳は物言いたげで、その尻尾は不服を訴えるようにパッタンパッタンと忙しなく揺れていた。

 翌日。
 茶会に向かうお母様とお姉様を玄関の前で見送っていたら、お母様が馬車に乗り込もうとする足を止めてこちらを振り返った。
「ねぇ、ティーナ。やっぱりあなたも一緒に行かない? 今日のお茶会の主催は、あなたも懇意のアルデミア伯母様よ。会自体も小規模だし。万が一挨拶が出来なくたって、彼女は絶対に悪くしないわ。それに、うまくすればあなたの自信に繋がる結果が得られるかもしれない」
 お母様はこう言ってくれるけれど、たとえ規模が小さかろうと茶会には我が家の他に数組の招待客がいるわけで。
 たとえアルデミア伯母様が私の無作法を気にしなくとも、他の招待客はそうはいかない。挨拶ひとつ、カーテシーひとつ満足に出来ない私に、みんなはきっと白い目を向けるだろう。
 私ひとりが恥ずかしい思いをするだけならまだいい。しかし、それをシェルフォード侯爵家の恥とされては堪らない。
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