拝啓、親愛なるお姉様。裏切られた私は王妃になって溺愛されています
「ラーラ! 駄目よ!」
 私は慌ててラーラを窘めて、深く抱き込んだ。
 なぜか分からない。けれど、ラーラは拾った当初からお姉様のことを特別嫌がっていた。それは私にしか分からない些細な反応の変化だったが、お姉様の近くにいくと毎回体を強張らせていたのだ。
「お姉様、ごめんなさい! この子、まだ私以外に触られるのに慣れないみたいで……本当にごめんなさいっ!」
 青くなって謝罪する私に、お姉様は引っ込めた手を胸もとで握りしめ、緩く首を横に振った。
「いいのよ。急に触ろうとした私がいけなかったわ。それに、ネコというのは往々にして気難しがりやだもの。気にしていないわ」
 お姉様はこう言ってくれたけど、きっと内心ではラーラの反応を悲しんでいるに違いない。
 ……どうしてラーラはお姉様にだけこんな態度を取るのかしら? こんなに思いやりにあふれたお姉様を邪険にするなんて、ラーラは人を見る目がないわ。
 私がメッとラーラの鼻先をつつけば、ラーラはむずかるように身じろいでひと鳴きした。
『みゅぁっ』
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