孤独な少女は優しさに堕ちていく。
からりと晴れた空に乾いた風。

クリスマスらしくないクリスマスがやってきた。

両親がいなくなってから、クリスマスはただの一日でしかない。

叔母夫婦は忙しい人で、クリスマスも仕事に行っていた。

だから、パーティーなんてしないし、プレゼントはお年玉に合体されていた。

クリスマスの思い出をとりとめなく思い出しながら私は玄関のドアを開けた。

ポケット越しにさくら色の貝殻を握りしめて歩き出す。

向かう先は両親と弟が眠るお墓。

日陰一つない開けた道を歩き続けること約10分、白い砂浜が見えてきた。

その浜から少し離れた所にある墓地に、迷いなく入っていく。

お墓の目の前にやってきて、少しの間、家族を思い出して感傷に浸る。

会わせていた手を離し、ゆっくりと踵を返した。

そして目の前の砂浜におりていく。

今日で砂浜に来るのも終わりだ。

千景さんに貰った、さくら色の貝殻も千景さんとの思い出と共に海に返す。

少しうつむき加減になりながら、さらさらした砂の上を歩く。

千景さんと出会った場所までやってきた。

フーッ、と息を吐いて、ポケットから貝殻を取り出す。

貝殻を手にし、顔をあげる。

数メートル先に茶色いふわふわした頭が見えた。

「っ!」

顔は見えていないのに、本能があれは千景さんだと言っている。

「千景さんっ!!」

出せる限りの声を振り絞って叫んだ。

千景さんがこちらを向くより先に、傍に駆け寄る。

「ぁ…」

こちらを見た千景さんの目が大きく見開かれた。

「なんで、いなくなっちゃうんですかっ!」

答えはなかった。

そのかわり、千景さんの背中が遠ざかっていくのが見えた。

「やだ、置いていかないで。私をもう、一人にしないでっ」

千景さんの足が戸惑うように止まった。

やっぱり千景さんは優しい。

「千景さんが好きなのっ。千景さんの特別になりたいなんて言わない。だから、一緒にいさせて」

言うつもりはなかったのに、千景さんに再び会うつもりは無かったのに、会ってしまえば、思いがあふれ出してくる。

「……もう、乙葉ちゃんは俺の“特別”だよ」

「ぇ?」

千景さんの口から信じられない言葉が紡ぎ出された。

「俺は、ずっと乙葉ちゃんのことが好きだったよ」

「じゃあ、なんでっ!」
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