孤独な少女は優しさに堕ちていく。
嬉しくて嬉しくてたまらない。

千景さんが私を選んでくれた。

突然、千景さんに抱きしめられた。

今までのような、ふわりと包み込むような抱擁ではない。

絶対離すまいと強く、強く、かき抱かれた。

「ごめん、ごめんね」

「千景さんが一緒にいてくれればそれでいいんです」

首を捻って見た千景さんの目に涙の粒が光っていた気がした。

「好きです。何回言っても足りないぐらい好きなんです」

「うん。俺もだよ」

千景さんが私にまわしていた腕をほどいた。

寂しくて、じーっと千景さんを見つめると、柔らかく目を細めた千景さんの顔が迫ってきた。

前に、ゴミを取ってくれただけのことをキスと勘違いしたことがあるから、今回もきっとキスじゃないと思っていた。

唇にぬるい熱と、指で触れられた時とは比べものにならないぐらいの柔らかさを感じるまでは。

「目、つぶらないんだ」

「ぇ、っ」

今、私の唇に触れたのは間違いなく千景さんの唇だ。

「よくわかんないって顔してる。じゃあ、もっかいしよっか」

「え?、でも、いや、…んっ!」

さっきのように一瞬で離れていってしまうキスじゃなかった。

長くて、千景さんの唇をはっきりと感じた。

甘くて、ドロドロに溶けてしまいそうだ。

「…、かわいい。俺、止まんなくなりそうなんだけど」

唇を離した千景さんが言う。

「もっと、欲し、いです」

離れてしまって、寂しくて思わず千景さんにキスをねだってしまう。

「…言ったからね。俺、本当に余裕ないよ」

言葉の通り容赦ないキスが襲ってきた。

途中で何度も角度を変えられ、時々ついばむように唇を食んでくる。

「んっ、ふぇっ」

思わず声が漏れた。

そしてものすごく長い。

息を吸いたくてて、思わず口を開けた。

「誘ってんの?」

口をつけたまま、千景さんに問われた。

「さそって、な…」

私の唇を割って、口の中にヌルリとしたものが入り込んできた。

私の舌に絡みついてきて初めて、それが千景さんの舌だと気がついた。

奥歯から、私の歯列がなぞられていく。

「ふぇ、んっ、はぁ、んぇ、…」

波音に紛れて、私の声とぴちゃぴちゃという舌が絡み合う音が聞こえた。

体が萎えて、ふらりと崩れ落ちそうになった所を千景さんに支えられる。

最後に私の唇を甘噛みした千景さんの口は糸を引いて離れていった。

私達の唇はテラテラと濡れている。

「今日は、おしまいね」

唇と唇を繋ぐ糸を舌で切りながら、千景さんが言った。

「続きは、乙葉が大人になってから、だね」

「…はい」

キスを辞めても未だに一人で立てない私を支えてくれている。

「そんなにもの欲しそうな目しないで。俺だって乙葉がかわいすぎてギリギリなんだから」

かわいい、かわいいと何度も言う千景さんにドクッと心臓が音を立てた。

いつの間にか私の名前が呼び捨てになっていた。

千景さんがこちらにかがんだ。

「乙葉、愛してるよ」

耳元で優しく囁かれた。
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