Hush night
わたしもそう思った。
ふたりだけの世界なら、何にも邪魔されることなく生きていけるのに。
ただ麗日と過ごす日々を楽しめるのに。
「そんな世界……あるのかな」
……あったらいいな。
そう思った矢先、彼はわたしの前髪をそっと避け、おでこに触れるだけのキスを落とした。
「出逢ったときからずっと、俺の中ではうるとふたりだけの世界だけどな」
その台詞は、わたしのものだと思う。
麗日には守るべき組織がある。人がいる。
彼がいないと成り立たない、そんな居場所がある。
でも、対してわたしには、何もない。
空っぽで、麗日しかいない世界を生きている。
彼がいなくなれば、ぽっかりと穴が空いたようにつまらない人生になるのは明白だ。
そうなるのは、怖い。
そうなる前に、跡形もなく消えてしまいたいほどに。