宿り木カフェ


「思うんだけど」

『うん?』

「ここまで会話してて、とてもオサムさんが結婚できない人だとは思えないんだよね」

『でも出来てないから。現実的に』

「何か行動してないの?
お見合いとか、婚活パーティーとか」

『昔はしたこともあるけど、もうここ数年何もしてないね』

「それではなかなか結婚できないのでは?」

『いや、もう出来ないから一人で生きていく生活設計に変更した』

「早くない?!」

『何言ってんの。
どんどん少子高齢化に拍車掛がかるんだよ?
自分達の老後なんて自力でなんとかしなきゃいけない訳で、そう思うなら早く行動しておくのは当然だろ?』

そう言われて、私が彩に老後の計画について話したことを思いだした。

今まさに反対になっている。

人様にはそういって、自分にはやはり甘いのかも知れない。
というか現実問題として口先だけで認識していなかったとも思えた。

『そういえば、結局例の友達に連絡したの?』

「あ、いや・・・・・・」

『話しにくい気持ちはわかるけどさ、だいぶ経ってるよね、あれから。
先延ばしにするほど言いにくくなると思うけど』

「うん、それは・・・・・・わかってる」

ちょうど時間も来て、オサムさんに、今度は報告してくれよと、ようは連絡するように後押しをされた。

通話を終えて時計を見れば10時前。

私は思いきって彩の携帯にかけてみた。

出ない。

この時間なら仕事やお風呂の可能性だってある。
私は、今度電話がしたいとメールを送った。



返信が来たのは3日後だった。
今まで遅くとも翌日には返信が来ていたのに、こんなに遅くなった理由を心配した。
もしかしたら仕事でトラブルが起きているのか、体調を崩しているのか。
妊娠しているのだからかなり辛いのかも知れない。
私はとても心配で仕方がなかった。


彩と電話が出来たのは週末だった。
それも何故か曜日と時間を指定されそれを疑問には思ったが、私はようやく電話ができる事に一安心していた。


こちらからかけて簡単な挨拶をすると、

「彩、大丈夫?
もしかして仕事がかなりハードなの?
妊娠してるんだし体調が悪いとか?」

『あ、いや・・・・・・』

彩から言われた時間に電話をしたのに、何故か彩はなんだか落ち着かない感じだった。

「今、家だよね?」

『うん・・・・・』

「どうしたの?なんか変だけど」

何か電話の向こうから、ごそごそ動いているような音が聞こえる。
何だろう、ベッドで寝ながら電話しているのだろうか。

『え?そう?』

「うん。今ほんとに大丈夫なの?」

『あ、いや、実は彼が来てて』

「え?」

電話の向こうから、ちょっと待って!、という小さな彩の声が聞こえた。
おそらくマイクのところを手で覆って、彼に声をかけているのだろう。

そして突然、聞いたことのない彩の高い声が聞こえた。

あぁ、そうか。

「ごめん、邪魔したわ、切るね」

『あ』

私は一方的に通話を切った。

考えられない。

私と電話してるのをわかっているのに、彩の彼氏は、彩にいかがわしいことをしていた訳だ、親友と話しているというのに。

きっと彩だって困っていただろう。
これでやっとお祝いを言えると思った。
なかなか連絡出来なくて本当に心配していた。
でも、実際電話してみればこんな結果。

そんな事をすれば、自分の彼女の親友からどう思われるかなんかより、自分の性欲を優先するような男を選んだ彩にも苛立った。

いや、そもそもその男は私にどう思われるかなんて考えて無い、むしろ、私との縁を切らせたかったのでは無いだろうか。
今度は彩がどうしようもない男に捕まってしまったのではと、酷く心配になった。

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