宿り木カフェ
夜、早速一冊だけ買ってきた参考書を開く。
さすがに基礎の基礎は変わらないのだなとパラパラ呼んでいて思いはしたが、驚くほどに思い切り忘れている。
もう40歳を軽くを越えている。
こんな歳からあの時ですら四苦八苦していたものを覚えられるものだろうか。
足音がしてそちらを見れば、息子が飲み物を持って不審そうにこちらを見ている。
また変なことでも聞かれると思って何も聞かないのだろう。
私は苦笑いを浮かべた。
「ゲームも良いけど、睡眠は少しでも取れるようにある程度で寝なさいよ」
その言葉を聞いて、息子は目を丸くした。
「何ソレ、気持ち悪りぃ」
「なによ、気持ち悪いって」
「ゲームは良いってなんだよ、そんなこと言ったことないじゃん」
「そうだっけ?」
「そうだよ。何で急にそんなこと言うんだよ」
「何でって」
不審そうな目で聞いてくる。
考えて見れば、息子がこんなに話しかけてくるのも珍しい気がした。
「あんた、ゲーム好きなんでしょ?」
「そう、だけど・・・・・・」
「じゃぁ仕方ないじゃない。でも高校生なんだし、それをコントロールするくらいの努力は出来るでしょ?
ゲームで努力出来るんだし」
「ゲームの努力と一緒にすんなよ」
「なんかダサいわね、それ」
私の返答に思い切り顔をしかめると、ぷい、と部屋に戻ってしまった。
そうやら何かまた息子の機嫌を損ねることを言ってしまったようだ。
私はそれがわからずため息をついた。
そして目の前の何も書き込まれていない、新しい紙独特の香りがする参考書を見る。
分厚いのにこれでまだ1冊目。
こんなものを家のことをしながらやれるだろうか。
第一やりなおして、仕事なんてあるのだろうか。
今度はネットを開いて、求人情報を見てみることにした。
すると思ったよりも出てくる求人数に驚いた。
しかし求人内容が介護職が多い事、時間や曜日の縛りが多いところも多かった。
「そりゃそうよね、働いて欲しいんだもの。
長い時間、長い期間がいいわよねぇ」
でも個人病院もかなり求人が出ていて、そういう場所を見ると、短い時間でもとか、ブランクがあってもという事が書いてある。
復帰なんて考えたことが無くて、さすがに求人情報なんてまともに見たことが無くて、時代が変わったせいかこんなにも内容が変わっていることに驚いた。
そして、短い時間なら、ブランクあってもいいのなら、なんて思ってしまう自分が居る。
その為にはやはり勉強が必要だというのに。
「子供達には勉強しろっていうのに、自分は面倒だなんて。
でもねぇ」
私は再度ため息をついた。