宿り木カフェ


面倒になるといけないので、まだやる気のあるうちに私は教えてもらった一つに登録してみた。
はっきりいって、登録する時に色々書かないといけないことの方が面倒で心が折れそうになる。

「長男でもいいか、親と同居でもいいかってそこまで書くのか、うわぁ」

私は記載項目の細かさにうんざりとしていた。
別に長男でもいいけれど、向こうの親と同居なんてごめんだ。
身長とかこちらは書かないといけないけど、私の身長は約168センチ。
ヒールなんて履いたら、男性の平均身長を軽く抜くのだ。
出来ればぺたんこな靴を履くことを要求しない男性が良い。


私は初めて、結婚するならどういう男性が良いのか、自分で細かく考えないといけないという事にぶちあたった。
今までそんなこと考えたことが無かったので、本当に苦労した。
段々疲れてきてある程度で記入を済ませて、次は写真だ。

友人に、バリバリ決めてる写真じゃなくてそれこそ集合写真の一部を切り取るとか、真正面は向いてない方が良いだのと言われ、色々スマートフォンの画像を漁るけど、思ったより自分の写った写真が無い事に驚いた。
自分の写真を探せば1年以上前のしかなかった。

しかたなく、その友人達と写った写真を自分の部分だけトリミングし貼り付けた。
本当にこんなの毎回書いているなんてうんざりだ。
私はそこで登録完了を押し、パソコンを閉じた。



「なに・・・・・これ」

翌日朝、登録したサイトのメール受信箱を見ると、恐ろしいほどの数が入っていた。
スクロールしてもまだ終わらない。

「午前四時に送ってる人はなんなの」

私は逆に怖くなってとりあえず仕事に行くことにした。



「増えてる・・・・・・」

帰宅して再度見てみたらもっとメールはもっと増えていた。
この量をいちいち読んで、プロフィールまで見ないといけないなんて。
既に仕事で疲れているのに。
私はとりあえず、一番送ってきたのが早い人から読んでみることにした。

とりあえず、メールの文章があまりに定型文すぎる、偉そうな雰囲気を出しているものは除外。
そしてプロフィールを確認する。
写真を見て、不自然なものが結構ある。
わざと腕を写るようにしてあるものまであった。
ようは、ブランド物の時計などをアピールしたいのだろう。

「ある程度稼ぐと今度はそういうものに興味無くなるんだよね、男性って」

今まで交際したり付き合いのあった社長や稼いでいる人は、突き抜けてしまうと、思ったより物に固執せず、結構平気でファストファッションとか着てしまうのを知っていた。

「ふむ、除外、これも除外っと」

そういう事をしながら、なんだか自分がおそろしいモノに思えてきた。

現実では昔のように声が掛かることもちやほやされることも減ったというのに、このネットの世界ではまた昔のようなことが起きた。

きっとこれは最初だけ。
なんだかむなしくなってきた。
でもせっかく登録してここまで動くことにしたのだ。
私はとりあえず三人の男性に会ってみることにした。



< 60 / 83 >

この作品をシェア

pagetop