宿り木カフェ


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『おもしれぇー!』

私はあんなにまたやるかわからないし、そもそもタクヤさんをスタッフに指名するかも決めていなかったのに、もうこんな事があって誰かに聞いて欲しくてしかたなかった。

なのであのメールが来た勢いのまま私はタクヤさんを指名して、それも1時間で予約を入れた。
はっきりいってこの憤りを話すのに30分で済むとは思えない。
そして婚活サイトで出会った三人のことを、ひとしきり話し続けた。

タクヤさんは、ほう、おお!、ぶは!など思い切り良い相づちを打ってくれ、ひとしきり話した後、最初の言葉がそれだった。

『色々な人間観察出来たな、それ』

「笑いながら言われてもね」

私がため息をついてそういうと、悪い悪いと返ってきた。

「もうなんかさ、めんどうだわ」

それしかなかった。
頑張ってみた私が馬鹿馬鹿しい。

『一人有望なのいるじゃん』

「え?誰?」

『ほら、最後のオタク』

私は思わずえぇーと思い切り嫌そうな声を出した。

「どこが有望なわけ?
私には微塵も思いつかないんだけど」

『よく女性向けの雑誌にあるじゃん、理系の男性は結婚相手にお勧め!みたいな特集』

「あぁ。でも載ってるのは何の気遣いも出来ない人達だよねあれ」

冷めた声で言う私に、ひでぇ、と言いながら笑い声がする。

『男側からすると本気で失礼な特集だけどな。
男側が、こんなぼんやり女子は落としやすい!とか特集組んだら女達から批判の嵐だろうにさ』

「あーまぁそうね、失言でした」

『でも、周囲の男見てて思うのは、案外恋愛を出来ないやつの方が多いんだよ。
それなりに経験あるのに実は素人童貞とかさ』

「自分が色々食べたからって、そういうのさらっと言わないでよ」

『それなりに食ったから今がある。
というか貴女だって似たようなもんでしょ』

「それは・・・・・・否定しないわ」

確かにどれくらいが平均かはわからないが、それないの交際経験があるのだから、自動的に肉体関係だってそれなりの数はあった。

『今の男は、女を食えるヤツと、食えないヤツの二極化がでかいんだよ』

「ふーん。
で、なんで彼がお勧めになる訳?」

『自分で育成出来るじゃん』

「あのさ、なんで私がそんなお母さんみたいな事しないといけない訳?
そもそもああいう人って人の意見なんて聞くの?」

私の言葉に、向こうから、うーんと唸る声が聞こえる。

『それもそうだな』

「適当にお勧めしてた事がよくわかった」

私の少し怒りを含んだ声に、申し訳無い、と謝罪の言葉があった。

「そうそう、聞きたかったのよ。
タクヤさんが何でもてるのにネットで知り合った人と結婚したか」

『あーそうだよな』

「はい、どうぞ」

私が乱暴にボールを投げると、わははは、という笑い声がヘッドフォンから聞こえた。

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