宿り木カフェ

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「あの」

「はい」

松本さんは驚くことに約束の時間より前に来て私を待ち、それも今回は始めて見るきっちりとした服装だった。
私は思わず何かが起きそうで、食事がスタートした後も身構えていた。
そしてそろそろデザートも食べ終わる時だった。

「よ、よろしければ、今後正式にお付き合いを出来ればと」

真面目な顔でそう言った彼に、思わず、よっしゃぁと内心思ったが、急にタクヤさんに言われ流されている気もしてきた。

「あの、何で私が良いと思ったんですか?外見ですか?」

直球の質問。
きっと彼はこういう方が良いような気がしてきたのだ。
今までのような駆け引きも打算も無く、ただ聞きたければ聞けば良い。
彼は驚いたような顔をした後、少し考えてから話し出した。

「木内さんは美しい女性だと思います。
ですが一番は、美味しそうにご飯を食べることと、私に問題点を忌憚なく指摘をしてくれたことです。
大抵の人は面倒でそんな事をしませんから。
正面からぶつかってくれる、それが嬉しかったんです。
すみません、もっと上手く言えると良いのですが」

言語化するのは本当に難しいと呟く彼を見て、笑いがこみ上げた。
そんな事が男性を引き付けるポイントになるだなんて。

「はい、よろしくお願いいたします」

自然とそう答えていた私の顔は、きっと何の仮面も無い笑顔だった。

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