神様どうか三つ股愛をお許し下さい



 時々利用する居酒屋に連れて行った。菜未は情報通で社内の交友関係にかなり詳しいようだ。俺の知らない情報が菜未の口から次々出てきた。
「それにしても沖野さん、ほんとに下田さんにベッタリ過ぎじゃないですか?何か怪しいんですけど2人の間に何もないですよね。」
この言葉に俺は少なからずドキッとした。周りからはそんなふうに見られているのか。注意しなければ…、特に目の前にいる情報通の菜未には。とりあえず今のところは悟られてないようだ。

「あの美人で上からの信頼が厚い沖野さんなんだぞ、俺みたいな若手は眼中にないだろう。」
「と言うか、いくら美人でもあんな年増には手を出さないですよね。下田さんには私たちのように若手同士が似合ってるんです。」
菜未はもうかなり飲んでいて、ちょっと酔いが回っているようだ。

「おいおい、ちょっと言い過ぎじゃないか?そんなこと言って、菜未さんだって同じように年を取るんだから。」
「すみませ~ん。でも私は年増になる前に、好きな人からプロポーズしてもらって結婚するんですぅ。」
そう言って、思わせぶりに上目遣いに俺の顔をじっと見ている。だが俺は見て見ぬふりをして腕時計に目をやり
「そろそろおしまいにしようか。」
「ハイッ、ごちそうさまでしたぁ。」
会計を済ませて店を出た。
「遅くなったけど1人で帰れるか?」
「家はそんなに遠くじゃないからタクシーで帰ります。」
「そうか、じゃまた明日な。」
「ハイッ、失礼しま~す。」

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