Once again
(落合理沙さん、会ってみたいな……)

叶う可能性の低い願い事を心の中で呟きながら、藍はペダルを漕ぐ足に力を入れる。待ちに待った美術の授業は一限目だ。まるで遠足に行く子どものように胸が弾んでいく。

朝のホームルームが終わるとすぐ、藍は美術の教科書を手に美術室へと向かう。美術室は藍がいる教室がある南校舎ではなく北校舎にある。渡り廊下を通り、美術室がある三階へと歩く。

三階の廊下の突き当たりに美術室はある。放課後は美術部の部室へと変わるその部屋は、ドアを開けると油絵具のツンとした匂いがした。

美術室には誰もいない。藍が一番目に来た生徒のようだ。藍は目を輝かせながら美術室へ入る。部屋の壁には美術部が描いたのであろう水彩画や油絵が飾られ、壁際に置かれた棚には彫刻がズラリと並んでいる。

「おお〜……」

絵を藍は一つずつ見ていく。夜空を描いたものや、人物を描いたもの、植物を描いたものなど、様々な絵がある。藍は「どれも上手だな」とは思ったものの、あの日のように心が大きく震えることはなかった。
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