意地悪で優しいあなたの溺愛
「傘ナシで帰ろうとしてんの?」

一瞬で雨が止んだ。

違う、誰かが傘を差してくれたんだ。

顔を後ろに向けると、そこには左京くんの顔があった。

「さっ、左京くん…」

私を傘をに入れているため背中が濡れてしまっている。

「傘、自分に差して。濡れちゃうよ」

「別に。大丈夫」

左京くんは私を傘に入れ続けるつもりのようだ。

「家どこ。送ってく」

「ううん、大丈夫!帰れるよ!」

今までの左京くんとは別人のように、ちゃんと会話が続いている。

「いいから。行くよ」

左京くんは私の腕を引いて歩き出してしまった。

黙って私の家への道のりを歩く。

狭い傘に2人で入っているので時々肩がぶつかる。

いや、左京くんの背が高すぎて私の肩が左京くんの腕にあたっている。

「おまえ、小さくね?」

左京くんの傘を持っていない方の手が、私の頭に触れた。

普段男子に触れられることがないので、ドクドクと心臓がせわしなく動いている。

「花梨も同じくらいだけど…、左京くんが大きすぎるんだよ!」

大きいとは思っていないけど、特別小さい自覚はない。

平均より少し下くらいだったはずだ。

「ふーん」

左京くんは興味がなさそうな返事をして、私の頭から手をどけた。

「あっ、ここ、私の家!タオル持ってくるから、ちょっと待ってて」

「別にまた濡れるからいい」

左京くんはそのまま帰って行ってしまった。
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