意地悪で優しいあなたの溺愛

右京side

左京が顔色の悪い胡桃ちゃんを抱えて歩いていたときには、ものすごく驚いた。

俺の知る限り、左京は基本的に他人に興味を持たないから。

人嫌いというわけではない。

本当に、ただただ興味がない。

群がってくる女子達のことは鬱陶しく思っているようではあるけど。

でも、胡桃ちゃんに対しては左京が自分から構いにいった。

双子の姉である花梨や、一緒に居た美緒奈ですら気がつながった体調不良に気がつき、声をかけた。

同じ人物か疑うほどだ。

俺と左京は互いのことをほとんど知らない。

知らなくて困ったことはないし、大して興味もない。

とはいえ、こんな出来事があると流石に気になってしまう。

花梨も気になっているようだった。

「…京くんっ!右京くん!」

考え事をしていたら花梨に話しかけられていたのに気がつかなかった。

「ごめん、なに?」

「なんで右京くんは私に告白してくれたの?」

「…ほんとは、今日告白するつもりはなかったんだよ。けど、我慢できなかった」

カッと花梨の頬が赤くなる。

告白するなら、もう少し仲を深めてから、と思っていた。

でも、借り物競走で“大切な人”というお題を引いたとき、花梨しか考えられなかった。

理性とか、そんなものよりずっと先に足が花梨のもとへ走っていた。

「花梨のこと大好きだから、花梨も俺のこと好きで居て欲しい」

もう、あんな思いはしたくない。

「花梨のこと、大事にする」

「うん、」

返ってきたのは小さいけど、確かな返事だった。
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