意地悪で優しいあなたの溺愛
右京くんは表向き優しい王子様でありながらも、心の奥底に抱えている過去は辛く、苦しいものだった。

今日、その一端を垣間見た。

乾いた笑みを浮かべながら、なんてことないように過去を語る右京くんは、聞いているこちらが苦しくなってくる。

「俺が水無瀬財閥の息子だってことは知ってるよね?、俺の母さんが俗に言う毒親でさ。財閥だから、っていう以上に色々厳しく育てられた」

表情はほとんど変わっていなかったけど、右京くんの手は私の手を縋るように握っていた。

「テストで満点とるのは当たり前。一度でも満点を逃したらこれでもかって程に叱られて、俺の存在を否定される。“あんたみたいな子なんて居なくなればいいのに”とか、“あんたなんて大嫌い”とか毎日言われてた、」

そこで右京くんは一度言葉を切った。
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