意地悪で優しいあなたの溺愛

花梨side

胡桃と二人で、家への道を歩く。

ほとんど勉強した気のしない勉強会だった。

胡桃は、左京くんの言葉にものすごく落ち込んでいる。

私から見れば左京くんは、胡桃が嫌いだから友達じゃないと言いたいんじゃなくて、好きだからこそ友達で居たくない、と思っているように見えた。

でも、胡桃は言葉を額縁通りに受け取ってしまったようだ。

互いに本当に不器用だ。

「胡桃は、左京くんのことが好きなの?」

そもそも胡桃は、自分が左京くんのことを好きなのかどうかすらわかっていない可能性がある。

「…私にも、わかんないよ。でも、左京くんに嫌われるのは嫌だ」

「そっか」

やっぱりわかっていなかったか。

「花梨は、私が左京くんのことが好きそうに見える?」

胡桃の瞳には分厚い涙の膜が張っていて、頼りなさげに揺れていた。

「少なくとも、嫌いじゃないのはわかるかな。でも、胡桃の気持ちを一番わかってあげられるのは胡桃しかいないんだよ」

「…うん、」

胡桃が唇を噛んで俯いた。

途端に胡桃鎖骨の上についた赤い印が視界に入る。

「ゆっくり考えればいいんじゃない?高校生活はまだ始まったばかりなんだから」

水無瀬左京め。

胡桃にこんなものをつけておきながら、こんなに悲しませて、どういう了見をしているのだろうか。

いくら右京くんの兄弟だとしても許さない。
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