シェフな夫のおうちごはん～最強スパダリ旦那さまに捕まりました～

　口直しのシャーベットのあと、メインの肉料理が出された。
　牛フィレ肉の赤ワイン煮込み。
　フォークとナイフが必要ないくらいふわっと柔らかくて口の中でとろける。
　赤ワインソースも濃厚でバゲットを少しだけ浸して食べるのもいい。

　幸せすぎて自分がとろけそう。
　うっとりしているとテーブルの向こうで明人さんが笑った。
　まずい。変な顔見られちゃったかな？

「君は残さずに食べるんだね」
　と明人さんが言った。

　一瞬どうしてそんなふうに聞くのか不思議に思ったけど、素直に答えた。

「はい。だってどれもすっごく美味しいから。食べ終わるのがもったいないくらいです」

　明人さんが驚いた顔をした。

　しまった。今の言い方は子どもっぽかったかな？
　大人の女性ならもっと優雅なセリフを口にするはず。

「えっと、残すのは料理に申し訳ないなって」

　明人さんはますますぽかんとした表情になった。

「ああ、でもお腹いっぱいのときは本当に申し訳なくて」

　私はもう自分が何を言っているのかわからなくなった。

　どうしよう。嫌われちゃう？