シェフな夫のおうちごはん~最強スパダリ旦那さまに捕まりました~
「くくっ……あははっ」

 明人さんは急に笑い出した。
 私は恥ずかしくて首から頭のてっぺんまで猛烈に熱くなった。
 きっと今、真っ赤な顔をしているはず。

「すみません、頭の悪い回答で」
「いや、いいよ。そのほうがいい」
「えっ……?」

 明人さんは落ち着いた口調で言った。

「ごめんね。決してバカにしているわけじゃない。それに、頭が悪いなんて言っちゃだめだ。君は素直なだけで常識的な人だよ」
「そうでしょうか?」
「食べ方を見れば人となりがわかる」
「え?」
「君はいきなりフレンチに連れてこられたのに最初から完璧なマナーだよ」

 明人さんはフォークとナイフで柔らかい肉をふわっと撫でるようにカットした。

「別に試したわけじゃないんだけど、あまりに綺麗に食事をするから驚いたんだ」
「高校のときにテーブルマナーの実習があったんです」
「女子校だっけ?」
「はい。うちの高校ではマナー授業というのがあって、いろんな作法が勉強できるんです。お茶の点て方も教わりました」
「そうなんだ」

 明人さんがにこやかに反応してくれるので嬉しくて素直な言葉が口から出た。

「よかったあ。役に立って」
「君はほんとに正直だな」

 明人さんはふたたび口もとを押さえて笑った。

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