シェフな夫のおうちごはん～最強スパダリ旦那さまに捕まりました～

「おい浅井、うちには切れ味のいい包丁がそろっているからどれで捌かれたいか(・・・・・・・・・)お前に選ばせてやるよ」

　明人さんが真顔でそう言うと、浅井さんはテーブルにぶつかるほど頭を下げて「すいません！　マジすいません！」と言った。
　明人さんが私に顔を向ける。
　私はどうにか笑顔を繕ってえへへと笑った。
　
「波留、今晩のおかずが決まったよ」
「え？　食べちゃうんですか？　でも浅井さん、美味しくなさそう」
「それもそうだな」

　真顔の明人さんとそんなやりとりをしていたら、少し心が落ち着いた。そんな私たちのやりとりを見た浅井さんは急に笑って言った。

「おふたり、すげー息ぴったりじゃないっすか。なんだよー、心配して損した」
　
　私と明人さんが真顔で浅井さんの顔を見つめると、彼は再び罰が悪そうに「すいません」と頭を下げた。
　すかさず優菜が浅井さんに告げる。

「あなたモテないでしょ」
「そんなことないっすよ」
「うっかり発言しすぎ」
「気をつけますって」

　浅井さんは優菜にも頭を下げていた。