シェフな夫のおうちごはん~最強スパダリ旦那さまに捕まりました~
「あたしの何がいけないの? 相性がよくなかったの?」

 利香が潤んだ瞳でふたりを見やる。

「え……どうなんですかね? ねえ、穂高さん」
「知るか!」

 苛立ちを顔に出しながら明人が財布から金を取り出すと、利香も立ち上がった。

「私も帰るわ」

 さっさと店を出ようとする明人の背後を利香がついて行く。

「は? え? 何なんだよ。俺って何?」

 浅井は混乱する頭をくしゃくしゃと掻きながらふたりのあとを追いかけた。すっかり終電の過ぎた時刻だが、浅井は一駅なので歩いて帰ると言った。
 しかし、明人と利香はここから遠い。

「タクシー拾って一緒に帰りましょ」

 利香の提案を明人は無視する。
 明人は、とりあえずタクシーを拾ったら利香だけ乗せるつもりでいた。

「なんか、すいません穂高さん。押しつける感じになって」

 申しわけなさそうに言う浅井に、明人はため息まじりに返す。

「何を今さら」
「そうっすね。すいません」
「いいから。お前、明日遅刻するなよ」
「了解っす。じゃ、お疲れ様でした!」

 浅井は手を振りながら帰っていく。
 それを明人は見送ってから、さっさとタクシー乗り場へ急いだ。
 それを追いかけるように利香が小走りについて来る。

「ちょっと、そんなに早く歩かないで」
「早く帰りたい」

 明人は淡々と話す。

「そんなに奥さんに会いたいの?」

 明人はぴたりと立ち止まり振り返って真顔で利香を見据えた。

「会いたいよ」

 はっきりとしたその言葉に、利香は表情を歪ませた。

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