シェフな夫のおうちごはん~最強スパダリ旦那さまに捕まりました~
「ねえ、波留ちゃん」

 呼びかけてみても無反応。
 それでも明人はあきらめなかった。

「波留ちゃん、波留ちゃん」

 とんとん肩を叩いたり、頬を撫でてみたり、耳たぶをさわさわしてみたり。

「……ごちそうさま」

 ぼそりと波留が口にした言葉に明人は驚愕し、固まった。

(終了した? 君の食事は終了したのか? 俺はまだなんだけど!)

 しばらく波留の寝顔を眺めて、ようやくあきらめてため息をついた。
 波留を抱えてきちんと仰向きに寝かせて布団をかける。
 そして自分もとなりに寝そべった。

「あーあ、波留ちゃんは可愛いなあ」

 真顔でそんなことを呟きながら明人は波留を抱き寄せて頭を撫でた。
 たしかに今日は疲れた。
 明人自身も眠気が襲ってくる。
 波留を抱き枕にして眠ることにした。
 どうせこれから毎晩一緒に寝るのだ。明日でもいいやと思った。

(でも、少しくらい……)

 明人は波留の頬に唇を押しつけた。

(味見くらい、いいよな?)

 明人は波留の頬をぺろりと舐めた。

「ん、ん……」

 波留が妖艶なため息を洩らしので、明人の理性が崩壊しかけた。

(だめだ。自分で自分の首を絞めてどうする?)

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