シェフな夫のおうちごはん~最強スパダリ旦那さまに捕まりました~
「すみません、こんな話をして」
『いや、気になることがあれば何でも聞いていいよ』

 明人さんの優しい言葉に安堵する。
 だけど、なぜ私を食事に誘ったんですか? なんて聞けない。
 ただグルメの話題で意気投合したから誘ってくれただけかもしれないし、自惚れだなんて思われたくない。

「大丈夫です。では、当日楽しみにしています」
『俺も楽しみにしてるよ』
「はい、ありがとうございます」
『じゃ、おやすみ』
「おやすみなさい」

 電話を切ったあと、私はスマホを握りしめたままクッションに頭を乗せて寝転がった。

 総務の女子が狙っているくらいモテる明人さん。
 どうしよう。
 今までろくに男性と話したことがないのに、大丈夫だろうか。
 でも、初めて会ったあの日、料理の話をしていたときの彼はとても無邪気だった。
 きっとすごく料理が好きなんだろうって思った。
 私はそんなに得意じゃないから、うらやましいし、それに……。

 彼の手作りも食べてみたいなんて。

「何を想像しているの!」

 急に恥ずかしくなってクッションに顔をうずめた。
 なんだか明人さんのことを考えると頬が熱くなる。
 こんな気持ちは中学生の頃にクラスの男の子にバレンタインのチョコをあげたとき以来だった。

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