《更新中》エリアーナの結婚 ~ 落ちこぼれ地味っ子令嬢は侯爵家令息の愛され妻?!私、お飾りのはずですが…?
 それに。
 初めて目にした本物の『血液』は、十歳のまだ幼い少女の瞳には鮮烈が過ぎた。
 
 「ごめんなさい、ごめんなさい……!」

 薔薇の花弁のように愛らしい唇からは、ただ一つの言葉だけが溢れる。

 傷口からじゅわりと滲む真紅の雫に背中が震えた。どうして良いかわからずみるみる目頭が熱くなり、アメジストの瞳から大粒の涙がぽろぽろと頬を伝い落ちた。

 少女の動揺とはうらはらに、少年は怜悧な面輪をまろやかにほころばせる。
 自分よりも六つ歳下の少女の、長い睫毛が影を差すアーモンド型の大きな瞳や、緩やかに波打つ長い髪を結えた姿は実際の年齢よりも大人びて見えた。

「ごめんなさい……ほんとうにっ……」
「そんなに泣かないで? こんな怪我、たいしたことないよ」

 青草の上に尻を着く少年の(かたわら)で、少女は着ているものが汚れるのを気にすることなくぺたんと座り込んでしまう。

 淡い桜色のドレスが草の上でふわりと丸く円を描く姿は、まるで一輪の花が咲いたように可憐だ。


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