憧れの副操縦士は、許嫁でした~社長の隠し子CAは、パイロットにすべてを捧げられる~
1章・驚きの連続

私がCAになるまで

 リビングに置かれた写真には、お母さんがCAとしてLMM航空に勤めていた際に撮影された客室乗務員とパイロットの集合写真が飾られている。

 私はいつもその光景を見ては、密かに夢を抱いていた。

 ――いつかお母さんみたいな、CAになるんだと。

『CAなんて、なるものじゃないわよ』

 お母さんは私を身籠り、仕事を辞めている。
 その際いろんなことがあって、交際していた相手と結婚することは叶わなかったそうだ。
 彼女は自分と同じ思いを娘にさせるわけにはいかないと、深いため息をこぼす。
 その度に私はお母さんのようにはならないと胸を張り、まっすぐに夢に向かって走り続けた。

 けして裕福とは言えない暮らしではあったけれど。
 私はお母さんの娘として産まれたことを、後悔したことは一度もない。

 どれほど同級生たちから片親女と馬鹿にされたとしても、構わなかった。
 いつか必ず立派な大人になって、陰口を叩いてきた奴らと私たちを捨てた父親を見返してやる。
 そう闘志を燃やして生き続けた結果――奨学金を借りて専門学校に通い、私はついに夢を叶えた。

『お母さん! LMM航空から内定を貰ったわ! 春から私も、CAよ!』
『LMM……』

 ――かつて働いていた大手航空会社から内定を得たと聞いて、母は暗い表情で黙り込んでいる。

 辛く悲しい経験をした場所へ、娘を笑顔で送り出す気にはなれないのでしょうね。
 お母さんを悲しませることだって、頭の片隅では理解していたけれど――私はずっと、母と同じ制服を着てCAとして働く夢を思い描いてきたのだ。

 この夢は絶対に、諦めたくない!

 たとえ彼女を、悲しませることになったとしても……。
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