憧れの副操縦士は、許嫁でした~社長の隠し子CAは、パイロットにすべてを捧げられる~
『お母さんの夢は、私が叶えるわ!』

 母の夢は、定年までCAとして働き続けることだった。

 その夢は交際相手の身勝手な振る舞いによって私を妊娠したことにより、絶たれてしまったけれど――お母さんの反対を押し切って、無理やりLMM航空のCAとして働くことになるんだもの。

 その夢を叶えることだけに集中しないと、罰が当たるわ。

千晴(ちはる)……。おめでとう。辛いと感じたら、すぐに転職するのよ』
『入社する前から、もう会社を辞める話? もう、お母さんったら……』

 母は硬い表情で、唇を噛み締めた。

 ――今にして思えば、お母さんはこの段階で私の未来をある程度予測していたのかもしれない。

 CAを目指さなければ。
 別の航空会社に就職していれば。
 あの人が父親じゃなかったら……。

 ――四年後。

 べリが丘の会員制オーベルジュで衝撃的な告白を耳にすることなどなかったのに――。

< 2 / 139 >

この作品をシェア

pagetop