憧れの副操縦士は、許嫁でした~社長の隠し子CAは、パイロットにすべてを捧げられる~
細身で高身長な身体に似合わず、涼しい顔でオフィスに併設されたトレーニングルームから上半身裸の状態で出て来た姿を見たCAが、かっこよさにやられて数人倒れたとの逸話を持つ伝説の男でもある。
操縦桿を握る真剣な横顔は、一度見たら忘れられないほどかっこいい。
そんな彼に、私は密かに憧れを抱いていた。
――わかってる。CAとして定年までLMMに骨を埋める覚悟で入社した以上は、色恋沙汰とは無縁であるべきだって。
お母さんに心配をかけないためにも。
この気持ちは、胸の奥深くに押し留めておこう。
「入社四年目ですから」
「そうだったな。これからも期待している」
「はい。失礼します」
嬉しい言葉を投げかけられても何事もなかったかのように頭を下げた私は、コックピットをあとにした。
飛行機から降りて入国手続きを済ませると、オフィスで事務処理が待っている。
それさえ終えれば、あっという間に退社時間だ。
明日と明後日はオフ。
久しぶりに、お母さんのところに顔を出そうかな?
「お疲れ様でした。お先に失礼します」
「お疲れ様」
ロッカーロームで制服から私服に着替えると、オフィスを出て空港内に繋がる動く歩道の上に乗る。
ガサゴソとジャケットのポケットに入れておいたスマートフォンを取り出し、お母さんに電話をかけた。
数コールしないうちに聞こえて来た声を確認し、会話に集中する。
「もしもし、お母さん? 久しぶり。これから、実家に帰ろうと思うんだけど――」
『ちょうどよかったわ。こちらから、連絡しようと思っていたの』
「私に?」
『今日の夜、べリが丘のオーベルジュで食事をしようと思って……』
「ええ? あそこって、会員制の高級レストランと宿泊施設が一緒になったところでしょう? 私たち庶民が食べに行くような場所ではないわ」
べリが丘とは、空港から一駅先の高級ベッドタウンだ。
駅から裏手に真っすぐ伸びる櫻坂の周辺にはアクセサリーショップや呉服店といった高級店が軒を連ねている。
その奥には住民のプライバシーや安全を守るために分厚いコンクリートの壁が隔てられ、鉄格子の門には不審者の侵入を防ぐために守衛が常駐していた。
扉の奥はノースエリアと呼ばれる、富裕層が暮らす緑豊かな高台に位置する高級住宅街が広がっている。
操縦桿を握る真剣な横顔は、一度見たら忘れられないほどかっこいい。
そんな彼に、私は密かに憧れを抱いていた。
――わかってる。CAとして定年までLMMに骨を埋める覚悟で入社した以上は、色恋沙汰とは無縁であるべきだって。
お母さんに心配をかけないためにも。
この気持ちは、胸の奥深くに押し留めておこう。
「入社四年目ですから」
「そうだったな。これからも期待している」
「はい。失礼します」
嬉しい言葉を投げかけられても何事もなかったかのように頭を下げた私は、コックピットをあとにした。
飛行機から降りて入国手続きを済ませると、オフィスで事務処理が待っている。
それさえ終えれば、あっという間に退社時間だ。
明日と明後日はオフ。
久しぶりに、お母さんのところに顔を出そうかな?
「お疲れ様でした。お先に失礼します」
「お疲れ様」
ロッカーロームで制服から私服に着替えると、オフィスを出て空港内に繋がる動く歩道の上に乗る。
ガサゴソとジャケットのポケットに入れておいたスマートフォンを取り出し、お母さんに電話をかけた。
数コールしないうちに聞こえて来た声を確認し、会話に集中する。
「もしもし、お母さん? 久しぶり。これから、実家に帰ろうと思うんだけど――」
『ちょうどよかったわ。こちらから、連絡しようと思っていたの』
「私に?」
『今日の夜、べリが丘のオーベルジュで食事をしようと思って……』
「ええ? あそこって、会員制の高級レストランと宿泊施設が一緒になったところでしょう? 私たち庶民が食べに行くような場所ではないわ」
べリが丘とは、空港から一駅先の高級ベッドタウンだ。
駅から裏手に真っすぐ伸びる櫻坂の周辺にはアクセサリーショップや呉服店といった高級店が軒を連ねている。
その奥には住民のプライバシーや安全を守るために分厚いコンクリートの壁が隔てられ、鉄格子の門には不審者の侵入を防ぐために守衛が常駐していた。
扉の奥はノースエリアと呼ばれる、富裕層が暮らす緑豊かな高台に位置する高級住宅街が広がっている。