憧れの副操縦士は、許嫁でした~社長の隠し子CAは、パイロットにすべてを捧げられる~

花火大会当日・ホテルベリーズにて

 倉橋から事前に、スイートルームだと聞かされていたけれど……。

 オーベルジュの宿泊スペースだって住む世界が違うと感じたのに、それよりさらにランクを引き上げられてはたまらない。
 宿泊する部屋に案内された私は、ピカピカに整えられたラグジュアリーな光景を見て若干引いていた。

「金持ちって、シャンデリアが好きなの……?」
「この照明が気になるのか? 必要ならば取り寄せるが……」
「何言ってるのよ? 部屋にほしいって意味じゃないわ。中世ヨーロッパのダンスホールじゃないんだから……」
「……落ち着かないか」
「そりゃあ、そうでしょ。天倉の家だっていまだに馴染めないのよ? 最上級の宿泊施設に案内されたって、くつろげるわけがないでしょう」

 全面ガラス張りのダイニングスペースでは、ベリが丘の風景を一望できる。

 高所恐怖症だったら、今頃パニックを起こしているところだわ。
 災害が起きれば、逃げる場所がない。
 まず助からないだろうと考えながら、ソファーに腰を下ろす。

「何か飲むか」
「水」

 今、安上がりな女だと思ったわね。
 仕方ないでしょ。

 お酒なんて、飲まないんだから。
 高級茶葉を使った淹れたての紅茶や、高級豆を使用したブレンドコーヒーをオーダーしろと言いたいのであればお手上げだわ。

 万が一溢して浴衣に染みを作ってしまったら……考えるだけでも憂鬱だった。
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