プルメリアと偽物花婿
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「先輩のご家族、みなさん優しいですね。先輩の生まれ育った家だ、って思いました」
「和泉もありがとうね。おばあちゃんにいろいろ気遣ってくれて」
夕方。私は和泉を送るために久しぶりに車を運転していた。和泉の実家は同じ市といっても歩いて帰るには遠い。少し話もしたかったし、飲酒もしていない私が送り届けることにした。
「別に気遣ってないですよ。もう一度結婚式がしたいのは俺のわがままでもありますから。ハワイではちょっと複雑なところがあったんですよ」
「複雑?」
「俺は先輩のこと好きで、愛を誓うっていうのも本当でしたけど。先輩は俺のこと好きなわけでもないし。少し虚しくなってしまって」
ハワイ挙式の時の和泉の表情を思い出す。
「俺の行動はちょっと強引でしたから」
「でも、そのおかげで今日おばあちゃんは喜んでくれたよ」
和泉が地元で改めて結婚式をしてくれるといってくれる気持ちは嬉しい。だけどそれはすぐすぐに実現できる事ではない。それまでに痴呆症がどこまで進行しているかわからない。ある日突然進行することもある、そうなれば間に合わないかもしれない。
「今となれば、良かったですけどね。あの時は虚しかったですよ」
「私あの時、和泉の幸せを誓ったよ。恋愛じゃなかったかもしれないけど、和泉のことを大切にしたいとは思ってた」
「そうでしたか」
ちらりと隣を伺うと、和泉が存外嬉しそうな表情をしていた。
「あ、そこ右折して細い道入ってもらっていいですか。そろそろつきます」
「うん」
「もう俺たちの家に帰りたくなってきました。先輩と離れて暮らすのもう無理そうです」
「……それは私もです」
実家で一晩眠っただけなのに、和泉の体温が恋しくなってしまうとは。
「車停めたらキスしてもいいですか」
「……地元だと誰に見られるかわからないから嫌だ」
「えー。別にいいじゃないですか。でもほんと地元に帰ると一人は知り合いに会いますよね」
「なんなんだろうね、この確率」
そんなやり取りをしていると目的のマンションに到着した。私はエントランス近辺に停車させたけど、和泉は降りようとしない。
「今日、母親出かけてるので。ちょっとだけ家に上がりませんか?」