プルメリアと偽物花婿
「離婚なんて珍しいことじゃないでしょう?」
「山岡という名前に覚えはありませんか。市議会議員の山岡です」
お母さんとお姉ちゃんはぴんとこない顔をしていて、お父さんが思い当たった顔をして「ああ、あの汚職事件の」と呟く。
「はい。十年程前に汚職事件でちょっとしたニュースになりました」
「ああ、それを気にしてるの? あれは結局誤解だったじゃない」
お母さんも思い出したようだけど、政治家の汚職事件なんて当時高校生の私が興味あったはずもなく。
お父さんの説明によるとうちの市が関わる汚職事件が起きたらしい。国会議員が地元議員に金を渡したと大きな問題となり、受け取ったとされた地元議員の一人が和泉の父だった。現職国会議員が関わる汚職ということで連日全国ニュースでも取り上げられるほどだった。
捜査の結果、山岡議員は関与していなかったことが判明したが、それまでに多くの時間を費やした。
「無罪だと証明できましたが、いまだに疑っている方もいらっしゃるので」
「でも山岡議員は今も現職だし後ろ暗いことはないんだから。それにお父さんのことと和泉くんとは関係のないことだしね」
お母さんのさらりとした言葉に皆が頷くと、ようやく和泉も安堵したようだった。
「そのことが原因で離婚を?」
「ええ、そうです。連日の放送に母が参ってしまいまして。元々不仲だったのもありますけどね。僕と父の縁は続いていますが」
「大変だったわねえ。結構バッシングがひどかったから」
家族はまったく気にしていないし、和泉にも笑顔が戻る。甥っ子がお歌を披露すると言い、そちらに話題がうつった。
和泉と私の家族の初面会は無事に終了した。